美容師として長く「その人の魅力」を引き出してきたIvory Salon代表・古里容子さん。婚活でもヘアスタイルやメイクを整えるだけではなく、自分の魅力に気づき、日々を楽しみながら“ご機嫌な自分”でいられることを大切にしています。髪と心の両方を整え、その人らしさを引き出す婚活支援について伺いました。
〈聞き手=笠原 佳介〉
今回話を聞いた人
Ivory Salon -Hair&Marriage- / 代表カウンセラー・美容師
吉祥寺の女性専用結婚相談所「Ivory Salon -Hair&Marriage-」代表。国際文化理容美容専門学校を卒業後、吉祥寺のヘアサロンに21年間勤務し、25,000人を超える接客・施術を経験。美容師として培った魅力を引き出す視点を生かし、外見と内面の両面から婚活をサポートしている。
婚活で自分の魅力を高めようとすると、髪型やメイク、服装といった「見た目」に目が向きやすい。
美容師として長く人と向き合ってきたIvory Salon代表・古里容子さんも、会員のヘアスタイルやメイク、ファッションを整える。しかし、その先にあるのは、単に「モテる見た目」をつくることではない。
髪を整え、自分でも知らなかった魅力に気づく。コンプレックスに新しい見方を持ち、婚活だけではなく日々の生活そのものを楽しむ。
そうして心まで軽くなったとき、古里さんは「その人らしい魅力」が自然に表れると考えている。
「その人が一番魅力的に見えるのは、ご機嫌なとき」
美容師と仲人。二つの仕事を通じて古里さんが整えようとしている、「髪と心」の婚活について聞いた。
人が苦手だったからこそ、美容師という仕事を選んだ
古里さんは、昔から人と話すのが得意で美容師になったんですか。
いや、むしろ逆なんですよ。もともとは、どちらかというと人が苦手な方なんです。
高校生の時に進路を考えて、美大に行くか、美容師になるかの二択があったんですよね。
絵を描いたり、ものづくりをしたりするのも好きだったので、人が苦手だから「美大に行って好きなことをやりたいな」とも思っていました。
でも、その時にいろいろ考えて、もっと自分に自信をつけたいなと思ったんです。
それで、あえて苦手なことに挑戦しようと思って、美容師を選びました。
美容そのものは、もともと身近だったんですか。
そうですね。実家が床屋ですし、叔母が元美容師だったり、親戚にヘアメイクをしている人がいたり、隣のお家も美容師さんだったり。
自分の髪を結ったり、お人形の髪を結ったりするのも好きだったので、技術職としての美容師は好きだろうなと思っていました。
ただ、実際に美容師になってみると、技術だけではできない仕事なんですよね。
というと?
お客様が「どういう髪型にしたいのか」を聞き出さないといけないじゃないですか。
しかも、髪型だけではないんです。
自分でセットできる人なのか。朝、髪に使える時間はどのくらいあるのか。どんなヘアケアなら続けられるのか。
そこまで聞かないと、その方に本当に合った提案はできないんですよね。
だから美容師って、実はいろいろなことを聞く仕事なんです。
お客様自身も、「本当はどうしたいのか」を最初から言葉にできるとは限らないですよね。
そうなんですよ。
質問されて初めて、「あ、自分ってこういうことを望んでたんだ」と気づくこともありますよね。
それって婚活も一緒だと思っていて。
会員様がどんな相手を望んでいるのかを話してもらうためには、こちらの質問力も大切です。
私は、答えを引き出せなかったら、こちら側の問題でもあると思っています。
美容師の時も仲人になった今も、その方が求めているものを引き出せるように、こちらも腕を磨き続けないといけないと思っています。
「髪を整えながら、心も整える」。美容師として決めた自分の役目
美容師として働き始めてから、「こんな美容師になりたい」という考えも変わっていきましたか。
そうですね。
当時の先輩やオーナーから、「髪と一緒に、心の疲れも切り取るんだよ」という話をしてもらったことがあるんです。
髪を切ってさっぱりするだけじゃなくて、会話だったり、技術の心地よさだったりを通じて、お客様の気持ちも軽くして帰ってもらう。
私なりに前向きに言い換えると、髪を整えながら、心も整えられる美容師になれたら素敵だよねということだと思うんです。
その言葉にすごく共感しました。
髪をきれいにする以上の役割を意識するようになった。
そうですね。
その先輩たちは、技術だけじゃなくて「どうやって生きていくのか」みたいなことも教えてくれる人たちだったんです。
「人として豊かに生きるって、どういうことだと思う?」と話したりして。
その中で、私は人に貢献できる生き方をしたいなと思うようになりました。
美容師として働くなら、髪を整えるだけではなくて、心も潤うような会話や施術をしていこう。
それを自分の役目みたいに決めたところがありました。
「どう生きるか」ということを、かなり若い頃から考えていたんですね。
そうですね。その「どう生きるか」という問いを、若い頃から強く考えるようになった背景には、家族の出来事もありました。
私が18歳の時に、12歳上の姉を亡くしているんです。
家族全体にとって、本当に大きな出来事でした。
姉は若くして亡くなったので、私はその時、「姉の分まで生きたい。人の二倍生きたい」と思ったんですよね。
それもあって、自分はどう生きるのかを若い頃からすごく考えてきたんだと思います。
仕事の仕方も、人との接し方も、恋愛の仕方も、結局はその人の生き方が表れるじゃないですか。
まず「自分はどう生きたいのか」という土台があって、そこからいろいろなものが決まっていく。
今振り返ると、人生の中にあった点と点がつながって、今の仕事になっているなと感じます。
美容師として大切にしてきたことも、そのまま婚活支援につながっているんですね。
すごくつながっていますね。
今は、見た目を整えて、心も整えて、婚活を応援できる人になりたいと思っています。
美容室で人をつないでいたら、いつの間にか結婚する人が増えていた
美容師から仲人へ進むきっかけは、どんなところにあったんですか。
吉祥寺でヘアサロンをやっていると、小学校、中学校、高校の友達もお客様として来てくれるんですよ。
そうすると、「古里さんの友達で彼氏が欲しい人いませんか?」とか、「こっちのグループと合コンをやりたいから、間に入ってくれない?」みたいな話がよく来るようになったんです。
それで合コンを開いたり、「この人なら、あの人が合うんじゃないかな」と思って紹介したりしていたら、結婚する人が出てきて。
気づいたら、紹介した人たちがどんどん結婚していったんですよね。
もともと、仲人的なことを自然にやっていたんですね。
そうなんですよ。
後から考えると、美容師って毎日いろいろな人に会っていますよね。
ずっとお話をして、人柄も見ていますし、「この人はこういう人だな」というのを自然と見ている。
だから、人を見る目みたいなものが、知らないうちに鍛えられていたのかもしれないと思います。
ご自身で婚活された経験も、その後の仕事につながっていますか。
つながっていますね。
30代後半で自分も婚活を始めて、最初に婚活パーティーへ行ったんです。
参加した場では、お話ししている中で自信がなさそうに見える男性もいました。
女性の中にも、髪型や服装を少し整えるだけで、もっと魅力が伝わりそうだなと感じる方がいたんですよね。
美容師だからこそ見える部分もあった。
そうだと思います。
私自身はありがたいことに、いくつか参加した婚活パーティーで良い反応をいただくことが多かったんです。
でも、それは何か特別なことをしたからではなくて、普段から身なりを整えていたり、人と会話することに仕事で慣れていたりしたからだと思うんですよ。
だから、「ちょっとしたポイントやコツを知ったら、この人たちももっと魅力が伝わるのにな」とぼんやり思っていました。
それまで人を紹介して結婚につながった経験があって、美容師として人の見た目や魅力を見てきた経験があって、自分自身も婚活をした。
後から考えると、その点と点がつながって、結婚相談所という仕事になった感じですね。
「人に幸せにしてもらう」ではなく、自分で自分をご機嫌にする
婚活を始める会員さんに、最初に伝えている考え方はありますか。
キックオフミーティングの時にお話しすることの一つに、人に幸せにしてもらおうという発想だけでは、幸せになりにくいよという話があります。
「結婚すれば幸せになれる」とか、「素敵な人が私を幸せにしてくれる」というだけだと、どうしても受け身になりやすいですよね。
私は、一人でいても幸せな人と、一人でいても幸せな人が一緒になるから、幸せをさらに増やしていけると思っているんです。
一人の時点で、自分の生活を楽しめていることが大切なんですね。
そうなんです。
それって言い換えると、自分で自分の機嫌を取れる人なんですよね。
自分が何をしたら楽しいのか。何をしたらご機嫌でいられるのか。何をしたら幸せだと感じるのか。
それを自分で知っている。
そういう人は、同じように人生を楽しんでいる人とも出会いやすいと思うんです。
だから、このマインドセットは幸せな結婚生活にもつながっていくと思っています。
そこから「ご機嫌」という言葉が出てきたんですね。
そうだと思います。
それに、客観的に見ても、やっぱりご機嫌な人って素敵に見えませんか?
この人が一番魅力的に見える時って、その人がご機嫌な状況の時だと思うんです。
本人にとっても、ご機嫌な時って楽しいですよね。
だから私は、その人のご機嫌な状態を引き出すことが、魅力を引き出すことなのかなと思っています。
髪を整えると、「新しい自分」に少しワクワクできる
会員さんがご機嫌な状態になるために、古里さんは会員さんにどのようなことをされてるんですか。
一つは、やっぱり美容師としてできることですよね。
ヘアスタイルを整えたり、メイクや洋服、アクセサリーを提案したり。
ご本人が「こうなりたい」と思っている自分に、見た目から近づけていくことができます。
外見が変わることで、気持ちにも変化がありますか。
ありますよね。
新しい髪型になったり、今までと少し違う自分になったりすると、「こんな自分もいるんだ」ってワクワクするじゃないですか。
気分が変わって、ご機嫌になれる。
そういう状態で婚活のスタートを切ってもらえるのは、私ができることの一つだと思っています。
誰かにモテる見た目へ変えるというより、本人が自分を見て少し気分が上がることの方が大切なんですね。
そうですね。
自分の魅力に本人が気づいて、自信を持てるようになることが大切だと思っています。
見た目を整えること自体が目的ではなくて、そこから「私、これも似合うんだ」「こういう自分もいいな」と思える。
そうすると表情も変わりますし、婚活にも前向きに入っていきやすいと思います。
コンプレックスも、見方を変えれば「その人の魅力」になる
見た目以外の部分では、心を整えるためにどんなことをしていますか。
私は美容師だけをやっていた時から、言葉の言い換えをすごくしていたんですよね。
たとえば、「私、顔が長いから」とおっしゃる方がいたら、「顔立ちがシャープですよね」と言い換えてみる。
本人がコンプレックスだと思っていることでも、他の人から見たら違う魅力に見えていることってあるんです。
婚活でも同じようなことをするんですか。
しますね。
まずはちゃんと受け止めます。
「そっか、それが嫌なんだね」と。
そのうえで、「でも、別の角度から見るとこういうふうにも見えるよね」という視点を伝えます。
たとえば「私は人見知りだから婚活がうまくいくか不安です」と言われたら、「それって、人と丁寧に付き合っているとも言えるよね」と。
「すぐに白黒つけたくなるところがある」という方だったら、「決断が早い一面もあるよね」と。
一つの特徴にも、いろいろな見方がありますから。
相手への見方を変える時にも使いますか。
使います。
たとえば、「お見合い相手が自分の話ばかりして、私には全然質問してくれなかったんです」と言われたとします。
それはもちろん一回受け止めるんですけど、
「もしかしたら、あなたのことを気に入って、自分のことをたくさん知ってほしかったのかもしれないよね」
と伝えることもあります。
そうすると、「あ、そういう見方もあるんだ」となるじゃないですか。
私は、新たな視点を一緒に見つけることも、自分の役目かなと思っています。
本人が「これが私だから」と決めつけすぎないようにする意味もありそうですね。
そうなんです。
「私はこういう人だから」と自分で決めつけてしまうと、新しい行動ができなくなることもあります。
だから最初に、「自分で自分の可能性を狭めないでね」ともお話しします。
新しいことをやってみて、「私、こんなこともできたんだ」となれば、それもまた自信につながりますから。
日常的に使う言葉にも気をつけましょうね、とお話ししています。
私は、考えていることって言葉に出るし、言葉は行動にもつながっていくと思っているんです。
だから、ネガティブな考えを別の角度から見てみる練習をすることも、普段使う言葉を整えることも、「心の品格」を整えることにつながると思っています。
見た目だけをきれいにするのではなくて、心や言葉も一緒に整えていく。
そこも婚活では大切だと思います。
婚活を始めたからこそ、「婚活以外の人生」も楽しんでほしい
「自分で自分をご機嫌にする」と言っても、何をしたらいいかわからない方もいそうですね。
そうなんですよ。
「自分で機嫌を取ってくださいね」だけでは、「何をすればいいんですか?」となる方もいると思うので、そこは一緒に考えます。
趣味がある方なら、それを楽しんでもらえばいい。
「特に趣味がありません」という方だったら、新しく作る。
Netflixを見るでもいいし、甘いものが好きなら、休みの日にケーキ屋さんを巡るでもいい。
本人が楽しいと思えることなら、何でもいいんです。
婚活を始めたら、むしろ婚活を最優先にした方がいいという考え方ではないんですね。
女性には、むしろ婚活だけに集中しないでほしいと思っています。
婚活だけにものすごく集中していると、必死になってしまうじゃないですか。
それに婚活って、どうしてもうまくいかないこともあります。
そこだけに気持ちが集中していると、一回一回の出来事で疲れてしまう。
だから、「婚活を始めたからこそ、人生全体を楽しんでね」と伝えています。
お友達と食事へ行ったり、カフェに行ったり、自分の趣味を楽しんだり。
友達との予定が先に入っているなら、婚活の予定を少し後にしてもいい。
自分がご機嫌になれることをちゃんとやってほしいんです。
実際に、婚活そのものを楽しんでいた会員さんもいましたか。
いましたね。
最終的に成婚された女性なんですけど、婚活自体をすごく楽しんでいたんです。
たとえば、別の方だったら「なんなの、この人!」って怒りそうなお見合い相手でも、その方は、
「今日会った人、こんな感じだったんですよ(笑)」
って楽しそうに報告してくれるんですよ。
私も「え、どんな人だったの?」って聞いて、話を聞くのがすごく楽しみで。
最後には「面白かったです」って笑い話にしてしまうんです。
同じ出来事でも、受け止め方が全然違うんですね。
そうなんですよね。
もちろん、もともとの性格もあるとは思います。
でも、本人の気持ち一つで、婚活って楽しめるか楽しめないかがかなり変わると思います。
その方は疲れている感じもあまりなかったですね。
何でも無理にポジティブに考える必要はないですけど、時には笑い話にできたり、自分の人生を婚活だけにしなかったり。
そうやってご機嫌でいられることって、やっぱり婚活にもいい影響があると思っています。
成婚した後も、髪を切りながら人生の話ができる
成婚された会員さんとは、その後もお付き合いが続くことはありますか。
ありますよ。
卒業された後も、ヘアカットに来てくださっている方が何人かいます。
それが美容師と仲人を両方やっている面白さでもありますね。
婚活中とは、話す内容も変わりそうですね。
変わりますね。
婚活中は、「この人とこういうことがあった」とか、「今度こういう予定です」という話を聞いていました。
だから、ご結婚した後もお相手のことを私はある程度知っているんですよ。
友達とは違うんですけど、「私たち夫婦のことをよく知っている人」みたいな、ちょっと特殊な存在になるんですよね。
髪を切りながら結婚生活の話を聞いて、「今も仲良くやってるんだな」と安心させてもらうこともあります。
婚活が終わっても、髪を切る時間の中でまた話ができる。
そうなんです。
昔から通ってくださっている美容室のお客様も、旦那さんの悩みだったり、息子さんの話だったり、いろいろ話してくださるんですよ。
その時に、自分が持っている知識から新しい見方を伝えたり、少しイライラが静まるようなお話ができたりする。
だから、「美容師をやっていて良かったな」と思います。
婚活が終わったら全部終わりではなくて、その後も髪を切りながら人生の話ができる。
私自身も、そうやって長くお付き合いできることが楽しいです。
最終的に、Ivory Salonでの婚活を通して、会員さんにどうなってほしいですか。
美容師だけをやっていた頃から気持ちは変わっていないんですけど、女性を応援できる存在になりたいですね。
婚活だけがうまくいけばいいということではなくて。
私がお伝えしていることには、男女のコミュニケーションだけじゃなくて、人間関係をよくしたり、生きやすくしたりするヒントも入っていると思っています。
だから、Ivory Salonでの婚活を通して、人生全体を豊かにしていただきたい。
そう思っています。
ご機嫌な自分でいることから、婚活は変わっていく
古里さんが美容師として向き合ってきたのは、髪だけではない。
「どうなりたいのか」を聞き、その人の生活に合う形を考える。本人が短所だと思っている部分に別の見方を渡し、髪を整えながら心まで少し軽くする。
仲人になった今も、その本質は変わっていない。
外見を整えて、新しい自分にワクワクする。コンプレックスを別の角度から眺めてみる。婚活だけに追われず、友人や趣味との時間を楽しむ。
そうした積み重ねの先にあるのが、古里さんのいう「ご機嫌な状態」である。
誰かに魅力的に見せるために、自分を別人へ変える必要はない。
自分が何をすれば幸せなのかを知り、自分自身を心地よい状態に整える。そうすることで、自分の魅力にも気づき、それを表に出しやすくなっていく。
髪を整え、心を整え、その人自身の人生まで少し豊かにする。
それが、美容師でもある古里さんがIvory Salonで届けようとしている「髪と心の婚活」なのである。



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