婚活すみれ会の伊集院淑子さんに、「結婚するとはどういうことか」「結婚させるとはどういうことか」を伺いました。成婚退会だけをゴールにするのではなく、ご縁の先に続く人生まで大切にする、町の仲人の仕事に迫ります。
〈聞き手=笠原 佳介〉
今回話を聞いた人
婚活すみれ会 / 代表・仲人
婚活すみれ会代表。1992年にオーネット新宿カウンセラーに就任し、1998年に結婚相談室「婚活すみれ会」を独立開業。仲人歴25年以上の知識と人脈を活かし、40代・50代を中心に、シングルマザー・ファーザーや親御さんからの結婚相談にも対応している。会員一人ひとりに寄り添う“手作りのお世話”を大切に、半年〜1年以内の成婚を目指して二人三脚で伴走している。
伊集院さんの魅力は、成婚退会をゴールにせず、その先に続く夫婦の時間や家族の広がりまで見つめているところにあります。会員数や成婚率では測れない、一人ひとりの人生に向き合う“町の仲人”としてのまなざし。結婚するとはどういうことか、良いご縁とは何かを問い続ける姿勢に、仲人という仕事の本質が表れていると感じ、お話を伺いました。
結婚相談所を探すとき、多くの人はまず、会員数や成婚率、料金、紹介人数といった分かりやすい情報に目を向けます。
もちろん、それらは相談所を選ぶうえで大切な判断材料です。けれど、結婚は条件の合う相手を見つけるだけで終わるものではありません。
そもそも、結婚するとはどういうことなのか。
一人でも楽しく過ごせる時代です。仕事や趣味があり、スマートフォンを開けば誰かとつながることもできる。若いうちは、「一人でも十分楽しい」「自由な時間を大切にしたい」と感じることも自然なことかもしれません。
それでも、人は少しずつ年齢を重ねていきます。
嬉しいことがあった時。ふと寂しさを感じた時。何かをしても、心から楽しいと思えない時。
そんな日々の中で、「おかえりなさい」「今日はどうだった?」と言ってくれる人がいること。何か特別なことをしてくれるわけではなく、ただそこにいてくれる人がいること。
婚活すみれ会の伊集院淑子さんは、それを「手を伸ばした先に相手がいる安心感」と表現します。
長年、町の仲人として多くのご縁を見届けてきた伊集院さんが見つめているのは、成婚退会だけではありません。その先に続く夫婦の時間、家族の広がり、そして何年も経ったあとに「あのご縁でよかった」と思える人生です。
今回は、伊集院さんに「結婚するとはどういうことか」、そして「結婚させるとはどういうことか」について伺いました。
結婚するとは、どういうことか
最初に伺いたいのですが、伊集院さんにとって「結婚する」とは、どういうことなのでしょうか。
今は、結婚しなくてもいい時代じゃないですか。
面談に来られる方の中にも、話しているうちに「なぜ結婚しなきゃいけないんですか」とおっしゃる方もいます。そうすると、私も「そうよね」と思うんです。
若い頃は、家族や友人、仲間との時間もありますし、仕事や趣味もあります。一人の時間を楽しむこともできますよね。「一人でも十分楽しい」「自由な時間を大切にしたい」と思うのも、自然なことだと思います。
でも、人生って長いですよね。
今は若いと思っていても、人は少しずつ年齢を重ねていきます。何かをしても心から楽しく感じられない時や、嬉しいこと、寂しいことを誰かに話したくなる時もあると思うんです。
そんな時に、「おかえりなさい」「今日はどうだった?」と言ってくれる人がいる。何か特別なことをしてくれるわけではなくても、ただそこにいてくれる人がいる。
私は、結婚するというのは、そういう安心感だと思うんです。
「ただそこにいてくれる人がいる」ということですね。
そうです。
いつも横にぴったりいるという意味ではありません。手を伸ばした先に相手がいる。手の届くところに、自分にとって大切な人がいる。
若い時には見えにくいかもしれません。でも、年齢を重ねた時に、そういう人がいることがどれほど心強いか。
結婚は、寂しさを埋めるためだけのものではありません。誰かの人生を大切に思い、誰かに自分の人生を大切に思ってもらうこと。それが、結婚の大きな意味なのかもしれませんね。
「結婚させる」とは、ご縁の先まで見つめること
伊集院さんは仲人として「結婚させるとはどういうことか」という問いを大切にされていますよね。
「結婚させるとはこういうことです」と、簡単に一言では言えないんです。
でも、ただお見合いを組んで、成婚退会まで進めればいいということではないと思っています。
結婚するというのが、手を伸ばした先に相手がいる安心感だとしたら、仲人が作るご縁も、その人にとって本当に安心できるものなのか、その先の人生につながっていくものなのかを見なければいけないと思うんです。
成婚退会だけを見ているわけではない。
そうです。
ご縁を作るのは、私たち仲人です。でも、そのご縁を広げていくのは会員さんたちです。
結婚して、夫婦になって、家族ができたり、人生が変わっていったりする。そのご縁の先にあるものを、仲人は軽く考えてはいけないと思っています。
成婚退会は一つの節目です。でも、そこで終わりではありません。
その人が何年後かに「あのご縁でよかった」と思えるかどうか。そこまで考えることが、仲人の仕事なのではないかと思います。
良いご縁とは、人間的に好きになれること
伊集院さんにとって、本当に良いご縁とはどのようなご縁なのでしょうか。
まずは、二人が好きになること。そして、両家の親御さんが喜んでくれること。私は成婚退会の時に、よくそうお話ししています。
結婚生活には、苦しいことも悲しいこともあります。でも、二人が人間的に好きで、周りの人たちも喜んでくれるご縁であれば、いろいろなことを乗り越えていけると思うんです。
その「好き」というのは、恋愛的な好きというよりも、人間的に好きになれるかという意味でしょうか。
そうですね。人間的に、この人を好きになれるかどうかです。
もちろん、好きだなと思う気持ちは大切です。でも、結婚生活は長いものですから、恋愛的なときめきだけではなく、この人と一緒に生活していけるか、人として信頼できるか。そこが大切だと思います。
お見合い結婚は、「この人でいいのかも」から始まる
婚活では、「好きかどうか分からない」と悩む方も多いと思います。
恋愛結婚とお見合い結婚は、少し違うと思っています。
恋愛結婚は、「この人と一緒にいたい」「すごく好きだ」と気持ちが高まって結婚に進むことが多いですよね。でも、結婚して生活が始まると、気持ちが落ち着いていくこともあります。
一方で、お見合い結婚は最初から大きなときめきがあるとは限りません。皆さん、「ときめきがないんです」とおっしゃることもあります。でも私は、お見合い結婚では「この人でいいのかもしれない」という“かも”が大切だと思っているんです。
“かも”ですか。
そうです。「この人、いい人かも」「一緒にいて嫌じゃないかも」「結婚してもいいのかも」。そのくらいの余白が大切なんです。
結婚してから、思いがけない相手の良さが見えてくることもあります。ああ、この人はこういう優しさがあるんだな。この人と一緒になってよかったな。そうやって、結婚してから気持ちが育っていくこともあるんです。
だから、お見合い結婚では、最初から百パーセントを求めなくてもいいと思います。三十パーセントでも「いいな」と思えるところがあれば、あとの七十パーセントは結婚生活の中で積み上げていけばいい。そんなふうにお話しすることもあります。
仲人は、プロフィールに出ない違和感を拾う
このご縁は進めた方がいい、逆に一度立ち止まった方がいいと感じる時、伊集院さんはどのようなところを見ていらっしゃるのでしょうか。
会員さんとは、常にコミュニケーションを取っています。お見合いして交際になったら、「今どんな状況?」「どこへ行ったの?」「どんな話をしたの?」と聞きます。
そうすると、会員さんが「この前、彼と会ってきました」「彼女とこういう話をしました」と話してくれますよね。その話を聞いていると、「これはいいじゃない」と思うこともあれば、「これは少し違うかもしれない」と感じることもあります。
話を聞く中で感じるものがあるんですね。
そうですね。長くやっていると、仲人の勘のようなものがあります。
たとえば、何回かデートを重ねて、二人でドライブに行ったとします。その時に「二人だけの空間にいるのがつらかった」と会員さんが話したら、それ以上進めるのは難しいですよね。夫婦になるということは、二人で過ごす時間が増えるということですから。
逆に、最初は少し怖そうに見えたけれど、車の運転がとても丁寧だったとか、食事中の気遣いが自然だったとか、そういうところから「この人はいいかもしれない」と感じることもあります。
会員さん本人が気づいていない違和感や良さを、伊集院さんが拾うこともある。
ありますね。
会員さんは、相手を好きになっている時ほど、見えなくなることもあります。反対に、相手の良さに気づいていないこともあります。だから仲人は、会員さんの話を聞きながら、「そこは大切にした方がいい」「そこは少し立ち止まった方がいい」と一緒に考えていくんです。
ただ、仲人が慌ててはいけません。会員さんの気持ちが盛り上がっている時に、周りが強く反対すると、かえって気持ちが燃え上がってしまうこともあります。そういう時は、少し黙って見守ることも必要です。
“手作りのお世話”とは、会員さんと一緒に考え続けること
婚活すみれ会さんでは、少人数での“手作りのお世話”を大切にされています。伊集院さんにとって、手作りのお世話とはどのような関わり方なのでしょうか。
一番大切なのは、会員さんが幸せになっていくことです。
そのためには、仲人と会員さんがきちんとコミュニケーションを取ること。お相手のことを一緒に知っていくこと。そして、そのご縁が本当に会員さんの幸せな人生につながるのかを一緒に考えること。それが手作りのお世話だと思います。
ただ相手を紹介するだけではない、ということですね。
そうです。相手を紹介して、「はい、あとは二人でどうぞ」ではないんです。
交際中の会話を聞きながら、「それは少し違うんじゃない?」「結婚ってそんなものじゃないよ」と厳しく言うこともあります。
もちろん、会員さんの中には「放っておいてください、自分でやります」という方もいます。そういう時は距離を取ることもあります。
でも基本的には、会員さんと一緒に考えていく。相手の条件だけではなく、この人とどういう生活ができるのか、この人と一緒にいて安心できるのか。そこを見ていくのが、仲人の仕事だと思います。
会員数や成婚率よりも、「誰に相談するか」
少人数制だからこそ、そこまで深く会員さんと向き合えるという側面もありそうですね。
皆さん、結婚相談所を検索すると、大きな相談所が上に出てくるじゃないですか。そうすると、そこだけが結婚相談所だと思ってしまう方もいると思うんです。
もちろん、大きな相談所には大きな相談所の良さがあります。システムもありますし、会員数も多いですよね。
でも、私が思うのは、カウンセラーと仲人は少し違うということです。大きな相談所では、カウンセラーとして会員さんを担当することが多いと思います。一方で、小さな相談所では、仲人として一人の会員さんを大切に見ているところが多いと思うんです。
相談所選びでは、何を大切にしてほしいですか。
一番大切なのは、仲人さんと合うかどうかです。
仲人も人間ですから、「この人が本当に私の世話をしてくれるのか」「この人になら相談できるのか」を見てほしいですね。
成婚率が何パーセント、会員数が何万人という数字は分かりやすいです。でも、その数字の中に自分が入るかどうかは、別の話です。
仲人さんとの相性は、どのように見極めればよいのでしょうか。
やっぱり、実際に話してみることです。対面でもオンラインでもいいですが、顔を見て話すことが大切です。電話だけでは分からないことがあります。
そして、自分が本当に聞きたいことを聞いてみる。「こういう人が理想なんですが、どう思いますか」「自分の条件で活動できますか」と聞いてみる。その時の答えが、自分に合っているかどうかです。
ただ「大丈夫ですよ」「すぐ結婚できますよ」と言われるよりも、時には「それは少し難しいかもしれない」「なぜそういう人がいいの?」と問いかけてくれる仲人さんの方が、ちゃんと見てくれていることもあります。
結婚のイメージを、一緒に作っていく
結婚したいと思いながらも、自分がどんな結婚を望んでいるのか分からない方もいるのでしょうか。
最初の面談で、「結婚のイメージはありますか」と聞くことがあります。でも、そこで「え、イメージですか」となる方も多いんです。
そういう時は、こちらから広げていきます。どういう人が好きなのか。仕事は続けたいのか。子どもはほしいのか。どんな生活をしたいのか。そういう話をしながら、一緒にイメージを作っていきます。
条件ではなく、生活のイメージに目を向けてもらうということでしょうか。
そうです。
たとえば、年収の高い人がいいという女性がいたとしても、「なぜその年収が必要なの?」と聞きます。子どもがほしい、共働きもしたい、子育ても一緒にしてほしいということであれば、ものすごく忙しい高収入の男性よりも、家庭を一緒に見てくれる人の方が合うかもしれません。
結婚はお金だけではありません。この人と一緒に穏やかに暮らせるか。お互いに支え合えるか。楽しい人生を歩めるか。そういう視点で考えてほしいんです。
婚活は、相手を探す時間であり、自分を育てる時間でもある
伊集院さんは、婚活は勉強でもあるとお話しされていました。
そう思います。
結婚相談所に入るということは、すぐに相手が見つかる場所に入るということだけではありません。いろいろな人に会って、学ぶ場所でもあると思うんです。
お見合いをして、「変な人に会いました」と言う方もいます。でも、それも勉強です。こういう人は自分には合わないんだなと分かる。
反対に、すごくいい人に会ったけれど断られたとしたら、自分のどこが違ったのかを考えるきっかけになります。
婚活だけではなく、人生の勉強でもあるということですね。
そうですね。
笑顔で挨拶をすること。ありがとうと言うこと。相手の話を聞くこと。そういうことは、婚活だけではなく、仕事や人間関係にもつながります。
以前、会員さんに「もっと笑顔よ」「ありがとうと言葉にしないと」と話していたことがありました。その方がある時、「最近、会社で明るくなったと言われるんです」と話してくれたことがありました。
成婚にはつながらなかったとしても、婚活を通してその人が少し変わることはあるんです。
だから婚活は、相手を探す時間であり、自分を育てる時間でもあると思います。
ご縁は、成婚退会で終わらない
伊集院さんは、成婚された方々と今も交流があると伺いました。そうした再会の中で、ご縁の広がりを感じることはありますか。
あります。何年も前に成婚された方と、今でもお会いすることがあります。
ある方とは、十数年ぶりにお会いしました。その方は結婚後、新しい家族を迎え、奥様も学びながら子育てをされていました。ご主人もお仕事で立場が変わり、人生をしっかり歩んでいらっしゃったんです。
その時に、「伊集院さんからいただいたご縁を、僕たちがこうやって広げてきました」と言ってくださって。そういう時に、ああ、あの時ご縁をつないでよかったなと思います。
成婚退会で終わりではなく、その先の人生まで続いていくんですね。
そうです。
ご縁を作るのは、私たち仲人です。でも、そのご縁を広げていくのは会員さんたちです。
結婚して、子どもが生まれたり、新しい家族を迎えたり、夫婦で支え合ったり、それぞれの人生が広がっていく。
だから、仲人の仕事は「成婚しました、さようなら」ではないと思っています。ここまで長く続けてきたら、私が生きている間は見届ける。そんな気持ちですね。
長く仲人業を続けていると、いろいろなことがあります。それでも私は、心の中で「原点に戻ろう」と言い聞かせているところがあります。
このご縁は、本当にこの方の幸せにつながるのか。成婚退会だけではなく、その先の人生まで考えられているのか。そこに戻りながら、お相手探しをしているような気がします。
勉強会に込めた想い。仲人さんも学び続ける
伊集院さんは、仲人さん同士が学び合う勉強会も開かれていますよね。
最初の出発点は、仲人業をする仲人さんたちを集めたいという思いでした。
小さな相談所で、一人ひとりの会員さんに向き合っている仲人さんたちですね。新人の仲人さんも多かったので、勉強会のような形で始めました。
弁護士さんを呼んで、法律的なことを学んだこともあります。養子縁組や、何か問題が起きた時のことなど、仲人も知っておかなければいけないことがありますから。
単に情報交換をするだけではなく、仲人さん自身が学び続ける場でもあるんですね。
そうですね。
仲人は、会員さんの人生に関わる仕事です。だから、ただ会員さんを紹介できればいいというものではないと思っています。
会員さんに対して誠実に向き合えるか。相手の人生を軽く扱わないか。そういう人柄の部分も、とても大切なんです。
仲人さんにも、人柄や向き不向きがあるということでしょうか。
ありますね。
私はよく、仲人さんにはそれぞれの雰囲気があると言うんです。たとえば五人の仲人さんが並んでいたら、会員さんはその中から「この人が合いそう」と感じると思います。
それは、言っていることだけではなく、その人が持っている雰囲気なんです。
仲人さんにも、それぞれの個性があるんですね。
そうです。誰かの真似をすればいい、ということではありません。
安心感がある人、会話が楽しい人、厳しいけれど信頼できる人。会員さんによって、合う仲人さんは違います。
だからこそ、仲人さん自身も学びながら、自分らしい支援をしていくことが大切だと思っています。
結婚相談所を探している人へ。まずは、仲人さんと話してみてほしい
最後に、これから結婚相談所での婚活を考えている方や、婚活に迷っている方に伝えたいことはありますか。
大きな相談所だけが、結婚相談所ではありません。小さな相談所にも、一生懸命に会員さんと向き合っている仲人さんがいます。
だから、まずは話してみてほしいです。何軒か回ってもいいと思います。その中で、「この人なら相談できる」「この人は自分のことを見てくれそう」と感じる仲人さんを探してほしいですね。
会員数や成婚率だけではなく、誰に相談するかを見るということですね。
そうです。
結婚は、ゲームではありません。条件の良い人を選べば幸せになれるわけではありません。自分にとって本当に安心できる相手はどんな人なのか。どんな人生を一緒に歩きたいのか。そこを一緒に考えてくれる仲人さんに出会うことが大切だと思います。
ご縁の先の人生まで見つめる、仲人という仕事
成婚退会は、婚活における一つの節目かもしれません。けれど、伊集院さんが見つめているのは、その先に続く夫婦の時間であり、家族の広がりであり、何年も経ったあとに「あのご縁でよかった」と思える人生でした。
結婚させるとは、ただ二人を出会わせることではない。
その人が、手を伸ばした先に安心できる相手を持てるように、時には背中を押し、時には立ち止まらせながら、ご縁の先まで見届けること。
伊集院さんのお話から見えてきたのは、そんな町の仲人の仕事でした。



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