「泣いた時がスタート」人生の棚卸しから婚活を支える、忽那里美さんの仲人論

データで婚活を動かしながら、なぜ婚活者の心の奥深くにまで向き合うのか。忽那さんが「人生の棚卸し」から婚活を支える理由を聞いた。

〈聞き手=笠原 佳介〉

今回話を聞いた人

忽那里美
忽那里美

結婚相談所キュートピア / 代表

結婚相談所キュートピア代表。仲人歴15年。東京・日本橋を拠点に、20代から80代まで、全国の婚活者をサポートしている。もともとはメガバンクのシステム部門に勤務。データや仕組みを分析することを得意とする一方、人の心理や行動にも強い関心を持ち、現在の婚活支援では、感覚だけに頼らず、データ分析、心理学、行動特性なども取り入れている。キュートピアの成婚率は83%。IBJ優秀相談所表彰を7年連続で受賞。

結婚相談所の面談で、幼少期の記憶まで振り返る必要があるのだろうか。

結婚相談所キュートピア代表の忽那里美さんは、入会時の面談に、場合によっては5時間ほどかける。その人がどのような家庭で育ち、何を選び、どんな思いを抱えて生きてきたのか。生まれてから現在までの道のりを、一緒にたどっていくためだ。

面談の途中で、涙を流す人も少なくない。忽那さんは、その瞬間を「泣いた時がスタート」と表現する。

一方で、忽那さんはメガバンクのシステム部門で働いていた経歴を持ち、データ分析や仕組みづくりも得意としている。会員の活動状況を数値で振り返り、お見合いの結果が想定と違えば、プロフィール写真もすぐに変更する。

データで婚活を動かしながら、なぜ心の奥深くにまで向き合うのか。忽那さんが「人生の棚卸し」から婚活を支える理由を聞いた。

父のもとに集まった、100人、200人の独身者

笠原

忽那さんは、もともとメガバンクのシステム部門で働かれていたそうですね。現在の仲人という仕事とは、かなり違う世界に見えます。どのような経緯で結婚相談所を始められたのでしょうか。

忽那さん

大学は文学部文学科だったので、自分ではずっと文系の人間だと思っていたんです。

ところが銀行へ入社するときに受けた適性検査で、システムに向いているという結果が出てしまって。システム部門へ配属されました。

最初は「嫌だな」と思いましたよ。システムの仕事は、理系の人がずっと機械に向かってするものだと思っていましたから。でも、半年ほど研修を受けてみたら、意外と楽しかったんです。どんどん面白くなって、証券やグローバル分野のシステムに携わるようになりました。

その後、結婚を機に銀行を辞めて、パソコンのインストラクターや司会の仕事をしていました。そうしているうちに、父が結婚のお世話を始めたんです。

笠原

ではその時から結婚相談所を事業として始められたのでしょうか。

忽那さん

いいえ。最初は結婚相談所ではなく、完全なボランティアです。

父は損害保険会社で営業をしていた人で、50歳のときに突然会社を辞め、自分でオートリースの会社を立ち上げました。営業畑の人でしたから、とにかく顔が広かったんですね。

会社が軌道に乗ると、取引先や知人から「うちの息子が結婚しない」「娘に良いお相手はいないか」「従業員に独身者が多い」といった相談が集まるようになりました。

気がついたら、100人、200人ほどの独身者が集まっていたんです。

それで父が「あの人とこの人は合うんじゃないか」と紹介したところ、実際に結婚する人が出てきました。お茶代もこちらで負担して、父が必ずお見合いに付き添って。本当に持ち出しのボランティアでした。

「対人関係は苦手」と断っていた

笠原

忽那さんが、その活動に加わることになったきっかけは何だったのでしょうか。

忽那さん

父が行けないときに、「代わりに顔を出してきなさい」と言われるようになったのが最初です。

女性の方からすると、父には相談しにくいこともありますよね。それで「お前も手伝いなさい」と言われたんですけど、私はずっと「対人関係が苦手だから」と断っていました。

笠原

仲人というと、もともと人のお世話が好きな方がなるイメージもあります。忽那さんは、少し違ったのですね。

忽那さん

全然違います。私は一人で黙々と作業する方が好きでしたから(笑)。

今でも仲人さんの集まりへ行くと、自分は少し異端児のような気がするんです。皆さん本当に人が好きで、優しくて、温かい。

笠原

お父様がされていた活動を、どのように現在の結婚相談所へ変えていったのでしょうか。

忽那さん

父のように、こちらがお金を出し続ける形では継続できませんから、きちんと料金をいただく仕組みに変えました。

それから私はシステム出身なので、これからはオンラインの仕組みを使わなければいけないと思い、IBJへの加盟を提案しました。

ただ、父は大反対でした。「顔の見えない人を大切な会員さんに紹介できない。人の縁は手組みに限る」と。

最終的には「お前がやるなら、俺は手を引く」と言われたので、「それなら私がやります」と。そこから一人で結婚相談所を運営するようになりました。

「なぜうまくいかないのかわからない」という状態を作らない

笠原

システムの仕事をしていた頃の考え方は、現在の支援にも生きていますか。

忽那さん

かなり生きています。私は人を見るときも、どうしてもパターンで見るところがあるんですよね。

「こういう言葉を使う人は、このような行動を取りやすい」「こういうタイプの人は、交際が進むとここでつまずきやすい」という傾向が、ある程度見えるんです。

これをそのまま会員さんに言ってしまうと、冷たく聞こえるかもしれません。でも、表では自然にお伝えしながら、頭の中ではデータや過去の傾向を見ています。

笠原

会員さんの活動を見ているとき、具体的にはどのような情報を確認しているのでしょうか。

忽那さん

会員さんからいただいたデート報告を蓄積して、その方が使いがちな言葉や、考え方の傾向を分析することがあります。

月に一度ほど面談をして、4か月に一度は、それまでの活動を大きく振り返る資料も作ります。何人に申し込み、何件のお見合いが成立し、デートでどのようなことが起きたのか。事実と解釈を分けながら、一緒に確認していきます。

もちろん、感覚も使います。ただ、感覚だけで「この人が合いそう」と判断しているわけではありません。

笠原

そこまで細かく振り返るのは、なぜでしょうか。

忽那さん

こういうのが苦手な方には、合わないかもしれませんけどね(笑)。

ただ、「なぜうまくいかないのかわからない」という状態が一番苦しいと思うんです。データを見れば、どこでつまずいているのかを考えやすくなります。

一方で、人と人との関係は非合理なものでもあります。数字だけで決まるわけではありません。そのバランスは、いつも考えています。

プロフィールの力で、お見合いの入口をつくる

笠原

活動を始める会員さんに対して、仲人が最初にできることは何だと考えていますか。

忽那さん

仲人が最初にできる大きな仕事は、お見合いの機会をつくることです。お見合いが成立しなければ、婚活のスタート地点にも立てません。

そのために、プロフィール作りはとても大切です。そして、プロフィールの印象は、かなりの部分が写真で決まります。

撮影には必ず同行して、立つ場所や角度を変えながら100枚以上撮ることもあります。右側から撮った方が魅力的に見える方もいれば、左側の方がいい方もいますから。

皆さん緊張して、普段の表情が出なくなるんですよ。だから私は、全力で笑わせにかかります。

笠原

撮影中は、どのようなところを見ていますか。

忽那さん

歯を見せて笑い、顔の緊張がほどけているかを見ています。

人は笑うと、目の下や頬のあたりが緩みます。それが「私はあなたを警戒していません」という合図になるんです。見る側にも安心感を与えます。

反対に、男性が腕を組んで偉そうに写っている写真は、本人が格好いいと思っていても、女性には好まれないことがあります。

男性は女性の好みを十分にわかっていないし、女性も男性の好みをわかっていないことが多い。だから、本人が選んだ写真が、必ずしも異性に選ばれる写真とは限りません

笠原

プロフィールの写真にもかなりこだわるんですね。

忽那さん

はい。

公開した後も、反応が想定と違えば、写真をすぐに変えます。一週間も経たないうちに写真を変更することもあるぐらいです。

その方の条件や年齢を見れば、どのくらい申し込みが来るか、どのくらいお見合いが成立するか、ある程度の見立てがあります。そこから大きく外れていれば、何かが違うということです。

入会直後は多くの方にプロフィールを見てもらいやすい、大切な時期です。その機会を無駄にしないためにも、素早く改善します。

人は幼少期につくられた“眼鏡”で世界を見ている

笠原

プロフィールや活動結果を細かく分析する一方で、最初の面談には長い時間をかけることもあるそうですね。そこでは、どのようなお話をするのでしょうか。

忽那さん

皆さん「こんな人と結婚したい」とはおっしゃるんです。でも、自分のことを十分に知らないまま、どうして自分に合う人がわかるのでしょうか。

人には、自分では見えていない盲点があります。自分のことをわかっているようで、実はわかっていないんです。

だから私は、その方がこれまでどのように生きてきたのかを、最初に振り返ってもらいます。私はこれを「人生の棚卸し」と呼んでいます。

これまで生きてきた軌跡が、その人の思考をつくっています。

結婚した後も、自分が持っている色眼鏡を通して相手を見ます。相手の言葉や行動も、これまで身につけてきた考え方で解釈します。

だから、まずは自分がどのような眼鏡をかけているのかを知っておきましょう、ということです。自分が生きてきた中で身につけた癖を知ることは、とても大切だと思います。

笠原

自分が望んでいると思っていたものも、振り返る中で変わることがあるのでしょうか。

忽那さん

あります。

「こういう人がいい」という希望自体が、誰かに刷り込まれたものかもしれません。親に勧められた、友人がそのような相手と結婚した、テレビや物語の主人公を見て憧れた。さまざまな影響を受けています。

だから、「それは本当にあなた自身が望んでいることですか」と考えてもらいます。

もちろん、私が一方的に「あなたにはこの人が合います」と決めるわけではありません。実際に人と会った後の違和感を、一緒に言語化していくんです。

「条件は理想どおりだったのに、なぜか居心地が悪かった」と感じたなら、その理由を考える。そこで初めて、「自分はこういう人が好きだと思っていたけれど、実はこういう部分が苦手だったんだ」と気づくことがあります。

自分で気づいていただかないと、本当の意味では変わりませんから

笠原

過去の経験が、本人も気づかない形で交際に表れることはありますか。

忽那さん

あります。過去に人との関係で傷ついた方の中には、表面的な付き合いがとても上手な方もいるんです。

自分が傷つかないための振る舞いを、すでに身につけています。ですから、お見合いの一時間では「とても感じのいい人でした」と言われるんですね。

ところが、交際が進んで相手との距離が近づくと、急に怖くなる。

「この人も自分を裏切るのではないか」「また傷つけられるのではないか」と不安になり、相手に冷たい態度を取ったり、自分から交際を終了したりすることがあります。

笠原

そうした行動が出たとき、忽那さんはどのように声をかけるのでしょうか。

忽那さん

その行動にも、その人なりの理由があります。

だから頭ごなしに「その態度は良くない」と否定するのではなく、「本当に相手はあなたを傷つけようとしているのかな」「私から見ると、こういう状況に見えるけれど、どう思いますか」と、別の見方をお伝えします。

「これで大丈夫ですか」と不安になっている方に、「大丈夫よ」と言うだけで、次のデートへ進めることもあります。

5時間かけて、生まれてから現在までを聞く

笠原

本人の考え方の背景を知るために、どのようなところまでお話を聞くのでしょうか。

忽那さん

生まれてから現在までのストーリーを聞いていきます。場合によっては、5時間ほどかかります。

どのような家庭で育ったのか。子どもの頃はどのような性格だったのか。学校や仕事を、なぜ選んだのか。家族や友人、恋人とどのような関係を築いてきたのか。

人生は選択の連続ですよね。進学先を選ぶ、仕事を選ぶ、人と付き合う。婚活でも、この人との交際を続けるのか、終了するのかを選び続けます。

その選択には、その人なりの癖があります。これまでの選択をたどると、これからどのような選択をしやすいかも見えてくるんです。

笠原

過去の出来事そのものよりも、そこで何を選び、なぜ選んだのかを見るのですね。

忽那さん

そうです。

たとえば、「周囲の人を見返したくて大学を選んだ」という方がいたとします。仕事も同じ理由で選んでいるとしたら、結婚相手も「周りからすごいと思われる人」を選ぼうとするかもしれません。

さらに結婚後、家や子どもの学校を選ぶときも、同じ基準を使う可能性があります。

そこで初めて、本人が「自分は、人から羨ましがられることを基準に選んできたのかもしれない」と気づくんです。

自分の人生を振り返ることは、過去を責めるためではありません。自分がこれから何を基準に選ぶのかを、自分で決められるようになるためです。

キュートピアのカウンセリングルーム
カウンセリングルーム

本当の話が始まる瞬間。

笠原

そこまで人生を振り返る中で、会員さんの反応に変化はありますか。

忽那さん

これまで私が面談してきた中では、女性は8〜9割くらい、男性も半分くらいの方が涙を流されます。

私は、「泣いた時がスタート」だと思っているんです。

特に男性は、人前で泣くことがあまりないですよね。

その方が私の前で泣いてくださったということは、「自分の一番見せたくない部分を、この人には見せてもいい」と思ってくださった一つのサインだと思っています。

最初は皆さん、綺麗に話されるんです。よく見られたいでしょうし、「こんなことを言ったら引かれるかもしれない」とも思っています。

これまで誰にも話してこなかった生い立ちや、恋愛で傷ついたこと、自分の弱い部分を隠している方もいます。

そこから本当のことを話してもらえなければ、こちらも一緒に考えることができません。涙が出たということは、その人が初めて、本当の自分を出せた瞬間でもあると思うんです。

笠原

涙が出た後、ご本人にはどのような変化が見られますか。

忽那さん

「自分は本当につらかったんだ」「ずっと苦しかったんだ」「強く見せてきたけれど、本当は弱かったんだ」と、自分で認められることがあります。

女性が泣くのはよくて、男性は泣いてはいけないなんて、おかしいと思うんです。人間なのだから、つらければ泣きます。

「そりゃつらかったよね」と伝えると、これまで虚勢を張って頑張ってきたものが、一度さら地になるような瞬間があります。

私の中では、ゼロ地点に戻るようなイメージです。

笠原

そこから、すぐに考え方や行動が変わるのでしょうか。

忽那さん

何十年も続けてきた癖なので、すぐにすべてが変わるわけではありません。右利きだった人を、急に左利きにはできないのと同じです。とっさの場面では、長年身についた考え方や反応が、つい先に出てしまいます。

でも、一度自分の癖を知っていれば、少し落ち着いたときに「あ、また元の考え方に戻っていた」と気づけます。

実際に、ずっと周囲を敵のように見て、身構えていた方がいました。面談で涙を流した後、つきものが取れたように表情が変わったんです。

もちろん、その後もつらいことがあれば元に戻りそうになります。それでも、以前とは違います。自分で気づいたり、こちらから声をかけたりしながら、少しずつ自分を立て直せるようになります。

涙はゴールではありません。やっと、本当の課題に向き合える地点に立てたということなんです。

「ここでは話していい」と思える場所をつくる

笠原

初対面の相手に、自分の一番見せたくない部分を話すのは簡単ではないと思います。どのように安心してもらうのでしょうか。

忽那さん

まずは否定せずに話を聞くことです。「ここで話したことは外には出さないから、話していいよ」と伝えます。

それから、私自身も自分のことを開示します。

私にも、これまで生きてきた中でいろいろな経験があります。自分の過去もお話しすることで、「この人ならわかってくれるかもしれない」と思っていただけるのではないでしょうか。

YouTubeでも、自分の考え方や過去を話しています。会員さんの多くはYouTubeを見て来てくださるので、初めて会ったときから、少し信頼関係ができているんですよね。

皆さん、この事務所に来ると「いつも動画で見ていた場所だ」と喜んでくださいます。そういう小さな親近感も、本音を話すきっかけになるのだと思います。

笠原

話を聞く中で、あえて踏み込まないこともありますか。

忽那さん

あります。

少し話題に触れたときに、「今日はここには触れてほしくないんだな」と感じることがあります。そういうときは、その日は話さないようにします。

深く聞けばいいというものではありません。今、その人が何を受け止められる状態なのかを見ることが大切です。

笠原

本人の考え方が婚活を難しくしていると感じても、正面から否定すれば、かえって心を閉ざしてしまいそうです。どのように伝えているのでしょうか。

忽那さん

「あなたの考え方は間違っています」と否定するのではなく、別の選択肢を渡すようにしています。

人は何かを「考えてみます」と言うとき、これまでの経験や、自分の中にある考え方をもとに答えを出そうとします。

けれど、その考え方を続けてもうまくいかなかったからこそ、今の状況があるのかもしれません。同じ考え方のまま一人で考え続ければ、どうしても同じ答えにたどり着きやすくなります。

これまでの考え方をAとするなら、私から新しいBを一度入れてみてほしいんです。

笠原

新しい考え方を示されたとき、受け入れられる人と、そうでない人の違いはどこにありますか。

忽那さん

私は、素直さだと思います。

何でも言うとおりにしなさい、という意味ではありません。

納得できなくても、「忽那さんが言うのだから、一度やってみようかな」「自分の好みとは違うけれど、この人にも会ってみようかな」と試せることです。

やってみてうまくいかなかったとしても、それは一つの学びになります。でも最初から拒否して、またAだけで考えていたら、同じ結果を繰り返してしまいます。

伸びる人は、仕事でも婚活でも素直な人だと思います。

笠原

うまくいかない理由が、本人の考え方ではなく、もっと具体的なところにある場合もありますか。

忽那さん

もちろんあります。

私は、「なんとなくうまくいかない」という状態には、なるべくさせたくないんです。

原因を一緒に考えて、何かしら次にできることを提示します。

その方の今の状況や課題に合わせて、「今、この本を読んでほしい」と思う一冊を私が選び、おすすめすることもあります。

話題が少ない方には、婚活以外の時間の過ごし方から一緒に考えることもあります。

食べ方を指摘された男性には、事務所へ来ていただいて、一緒に食事をしました。お箸の持ち方から、食べ方まで確認します。

においについて指摘された方とは、薬局へ行って制汗剤を選びました。服装に課題があれば、ご本人の写真を使ってAIでコーディネートのイメージを作り、「このような服を買ってきてください」とお伝えすることもあります。

笠原

仲人の仕事として想像していた以上に、具体的なところまで一緒に取り組むのですね。

忽那さん

本人にとっては、なぜうまくいかないのかわからないことがつらいんです。

でも、「こうすれば変わるかもしれない」と、少し先に明かりが見えたら、人は歩けますよね。その状態をつくるのが、私たちの仕事だと思っています。

笠原

そうした働きかけによって、会員さん自身が大きく変わった事例はありますか。

忽那さん

はい。お人柄がとても素敵で、心から応援したいと思っていた男性会員さんがいました。

プロフィールをしっかり作っていたので、お見合い自体は組めるんです。でも交際にはなかなかつながらず、お相手から「話が面白くない」「一緒にいてもつまらない」と言われていました。

毎週末を婚活だけに使っていて、本人が楽しめるものがなくなっていたんですね。

それで一度お見合いの数を減らしてでも、自分が楽しめる時間をつくろうと話しました。「昔、何が好きだった?」と聞いたら、高校生の頃にサッカーが好きだったことを思い出してくれたんです。

まずはサッカー観戦を始め、その後は一日だけ参加できるフットサルにも行くようになりました。

面談で会うたびに、表情が変わっていきましたね。ユニフォームを持ってきてもらい、近くの公園でサッカーをしている姿を私が撮影して、プロフィールのプライベート写真にも載せました。

すると、サッカーが好きな女性とも出会えるようになったんです。

笠原

サッカーを始めたことをきっかけに、その方の婚活自体も変わっていったのでしょうか。

忽那さん

そうですね。その男性は、写真も好きだったことも思い出して、写真教室へ通い始めました。

人物を撮影する課題が出たけれど、被写体を頼める人がいないと言うので、「私でよければ撮っていいよ」と事務所に来てもらい、モデルにもなりました(笑)。

撮ってくれた写真を私のLINEのアイコンに使い、「あなたが撮ってくれた写真は好評よ!」と伝えたら、自信につながったようです。

少しずつ「自分もやればできる」と思えるようになり、表情や姿勢も堂々としてきました。転職もうまくいき、最終的には結婚が決まりました。

笠原

婚活のテクニックを身につけたというより、ご本人のあり方そのものが変わったように感じます。

忽那さん

そうだと思います。

婚活のために無理やり趣味をつくらせたというより、その人の中に以前からあった好きなものを、もう一度取り戻したんです。

婚活の先にある生活まで考える

笠原

本人の生い立ちや考え方まで見えてくると、どこまで関わるべきなのか、迷うこともあるのではないでしょうか。

忽那さん

あります。いつも考えます。

触れなくても結婚していく方はいます。ただ、その課題を抱えたまま結婚すれば、いつか夫婦関係の中で、同じ問題として表れてくるだろうなと感じることもあるんです。

たとえば、親から「良い結果を出したら認める」という条件付きの愛を受け、ずっと頑張ってきた方がいたとします。

その方が自分の過去に気づかないまま親になったら、子どもにも同じことをするかもしれない。それが見えてしまうことがあります。

笠原

成婚することだけを考えれば、そこには触れずに進める選択肢もありますよね。

忽那さん

そうなんです。「結婚させ屋」なら、とにかく今、結婚してもらえればいいという考え方もできます。

でも私は、結婚した後に、その方が幸せに暮らせるかまで考えてしまいます。

もちろん、すべてを婚活中に解決できるわけではありません。パートナーと出会い、二人で関係を築いていく中で、少しずつ乗り越えていける課題もあるでしょう。そうであれば、結婚することがその方にとってプラスになることもあります。

ただ、課題の内容や深さによっては、結婚相談所でのサポートだけでは十分ではないと感じることもあります。その場合には、心理カウンセリングなど、専門家の支援もあわせて受けていただくようお願いすることがあります。

笠原

ご本人にとっては、受け入れにくい提案になることもありそうです。

忽那さん

ありますよ。怒られたこともあります。

自分の生き方や、親との関係を見直すことは、とても苦しいんです。それを認めると、これまでの人生を否定するように感じてしまう方もいます。

だから無理やり変えようとは思いません。ただ、見えている課題をなかったことにもできないんです。

入会を希望されても、今の状態では十分に支援できないと判断すれば、お断りすることもあります。

私たちにも、会員さんとの相性があります。相談所を選ぶ方が仲人との相性を見るように、私も「この方を心から応援できるか」「一緒に進んでいけるか」を見ています。

忽那さんが考える、仲人の役割

笠原

忽那さんのお話を聞いていると、プロフィールを作る、相手を紹介するという枠を超えた仕事に感じます。忽那さんにとって、仲人とはどのような存在なのでしょうか。

忽那さん

結婚のプロデューサーでしょうか。

その方をどう魅力的に伝えるかを考えるところから始まります。それがプロフィール作りです。

活動の途中で困ったことがあれば、助言をしたり、一緒に改善したりします。ただし、仲人が前に出すぎてはいけません。

結婚するのは、会員さん本人ですから。

仲人は、あくまでも影の存在です。縁の下から支える存在でいなければいけないと思っています。

データで婚活の道筋を照らし、対話によって心をほどく

忽那さんが見ているのは、婚活者の年齢や年収、希望条件だけではない。

その人がどのような家庭で育ち、何を恐れ、どんな“眼鏡”を通して相手や世界を見ているのか。現在の行動だけではなく、そこに至るまでの人生をたどりながら、つまずきの理由を探していく。

だからこそ、面談で流れる涙をゴールとは考えない。

これまで自分を守ってきた心の鎧を一度脱ぎ、つらかったことも、弱かったことも、自分の一部として認める。そこで初めて、これまでとは異なる考え方や選択肢を受け入れられる。

泣いた瞬間は、ようやくゼロ地点に立てたときだ。

一方で、心の奥に向き合うだけでは婚活は進まない。プロフィール写真の表情を細かく確認し、活動結果をデータで振り返り、ときには食べ方や服装、趣味にまで踏み込む。

忽那さんの支援にあるのは、心理かデータかという二者択一ではない。

データで婚活の道筋を照らし、対話によって心をほどく。そして最後は、自分が前へ出るのではなく、本人が自分の足で歩いていけるよう、縁の下から支える。

それが、忽那里美さんの考える仲人の仕事である。

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