「結婚したら、すべてうまくいくと思っていた」。夫婦関係の危機を経験したGFL Mariage・石井さなえさんが伝える「幸せが続く結婚」

結婚すれば幸せになれる。そう信じていた石井さなえさんは、自身の夫婦関係の危機を通して、結婚後も関係を育て続ける大切さを知りました。その経験から生まれたGFL Mariageでは、自分にとっての幸せを知り、本当の願いを相手に伝えることを婚活中から重視しています。「結婚すること」ではなく、その先まで幸せが続く関係をつくるための支援について伺いました。

〈聞き手=笠原 佳介〉

今回話を聞いた人

石井さなえ
石井 さなえ
Sanae Ishii

GFL Mariage / 代表カウンセラー

GFL Mariage代表カウンセラー。大手広告代理店に20年以上勤務し、NVC、IFS、コネクション・プラクティスなどの対話法・自己理解について学ぶ。自身の夫婦関係の危機をきっかけにGFLと出会い、関係改善を経験したことから、GFLのメソッドを取り入れた結婚相談所を開業した。

結婚すれば、幸せになれる。

結婚する前の石井さなえさんは、どこかでそう信じていた。

広告代理店で働きながら、NVCをはじめとする対話法を学んできた石井さん。コミュニケーションについては人一倍学んできたからこそ、結婚生活もうまくいくと思っていた。

しかし実際には夫婦喧嘩が増え、感情的なやりとりの中で「離婚」という言葉が出ることもあった。

結婚したら、もうすべてがうまくいくというか、バラ色になると思っていたんです

そんな夫婦関係を変えるきっかけになったのが、GFLとの出会いだった。

GFLは「Generating a Field of Love」の略で、パートナーシップにおける自分の感情や願いを見つめ、相手との関係をより良くしていくためのメソッドである。

自身の夫婦関係が変わる中で、石井さんは「これを独身のときに知っていたら」と感じた。

その経験から生まれたのが、GFLの考え方を婚活支援に取り入れた結婚相談所「GFL Mariage」である。

石井さんが届けたいのは、ただ結婚相手を見つけるための婚活ではない。結婚した後も、大切な人との「幸せが続く関係」をつくるための婚活である。

「結婚したら、すべてうまくいく」。そう思っていた

笠原

石井さんは結婚する以前から、NVCなどの対話法を長く学ばれていたんですよね。そもそも、どうしてコミュニケーションに関心を持ったのでしょうか。

石井さん

最初は本当にライトなきっかけなんです。

当時、広告代理店で働いていたんですけど、広告代理店って一人だけで完結する仕事がほとんどないんですよ。いろいろな人と一緒に仕事をするし、個性的な人も多い。

そうすると、人間関係がつらければ会社に行くのもつらいし、人間関係が良ければ仕事も楽しくなる。

「もっと人間関係を良くするために何かできないかな」と思っていたときに、たまたま対話法を学んでいる人がいて、「私もやってみたい」と思ったのが始まりでした。

笠原

その頃から、いつか仕事にも生かしたいと思っていたんですか。

石井さん

そうですね。

周りからは「そんなことを勉強して何になるの?」みたいに言われることもありました。

広告代理店だと、仕事に直接つながる技術を勉強する人の方が多かったので、私はちょっと珍しいタイプだったと思います。

でも興味があったし、いつか何かの役に立つんじゃないか、仕事にもできたらいいなと思いながら、NVCやコネクション・プラクティス、IFSなどを学んで、対話や自己理解について考え続けていました。

ただ当時は、それを何に生かせばいいのかまでは分かっていなかったんです。

笠原

その後、ご自身が結婚された。

石井さん

はい。

私は結婚前から対話法をずっと学んできたので、コミュニケーションにはある意味、自信があったんですよ。

だから、結婚したらうまくいくと思っていました。

これだけ対話も勉強しているし、結婚したらもうすべてがうまくいくというか、バラ色になるんじゃないか」って、勝手に思っていたんですよね。

笠原

ところが、実際の結婚生活は違った。

石井さん

思ったより、全然うまくいかなかったですね。

対話を学んできた私が、夫と「対話できなくなった」

笠原

実際には、どんなことが起きたのでしょうか。

石井さん

一緒に暮らし始めてから、喧嘩がすごく増えたんです。

喧嘩が大きくなったときに、夫から「もう離婚だ」みたいな言葉が出ることがあって。

私はそれをものすごく真剣に受け取ってしまうんですね。

「本当に離婚するんだ」「じゃあ弁護士に相談しないといけない」「手続きはどうしよう」って。

具合が悪くなって寝込んでしまうくらいでした。

笠原

「離婚」という言葉の受け取り方が、ご主人と石井さんで全然違っていた。

石井さん

そうなんです。

後から分かったんですけど、夫は本当に離婚したいという意味で言っていたわけではなかったんですよ。

彼の中では、「もう嫌だ」「今すごくつらい」「もう耐えられない」という気持ちを、「離婚だ」という言葉で表現していた。

でも私は「離婚」という言葉を、そのまま離婚の手続きの話として受け取っていたんです。

お互いの気持ちが、そこで大きくすれ違っていたんですね。

笠原

対話法を学んでいても、冷静に話し合うことは難しかったのでしょうか。

石井さん

難しかったです。

私が対話で平和的に解決しようとしても、相手が反応的になったり、防衛的になったりする。

そして「離婚したい」と言われたら、今度は私も反応してしまうんですよ。

「なんでそんなことになるの?」って。

自分も平静でいられなくなって、喧嘩になってしまう。

対話の仕方がまずいのか、自分が悪いのか、相手が悪いのか、それすら分からない状態でした。

笠原

一番近い関係だからこそ、学んできたことだけでは解決できなかった。

石井さん

そうですね。

近い相手ほど、自分自身も強く反応してしまうんだということを、後から知りました。

「相手が悪い」から、自分に矢印を向けてみる

笠原

そこでGFLに出会ったんですね。

石井さん

はい。

本当にどうしたらいいのか分からなかったときに、家族から「パートナーシップ専門の心理学でGFLというものがあるよ」と紹介してもらって、夫婦で学び始めました。

GFLを学んで、自分にとって大きかったのは、「相手がどう悪いか」を見るのではなく、「自分の中で何が起きているのかを見る」という考え方でした。

笠原

自分に矢印を向けるということですか。

石井さん

そうですね。

以前の私は、夫に対してずっと、

「あなたが悪い。あなたがおかしい。私は正しい」

と思っていました。

でも、相手の言葉になぜ自分はこんなに強く反応するんだろう、と自分側を見るようになった。

相手を責めるのでもなく自分を責めるのでもなく、「自分の中で何が起きているのか」を見る。そこに立てたときに、本当に関係性が改善したんです。

笠原

例えば「離婚」と言われたときも、ご主人に「そんな言い方をするのは良くない」と注意するのとは違うのでしょうか。

石井さん

私なら今は、

「喧嘩のたびに離婚という言葉を出されると、私は本当に痛いし、つらい」

という、自分の気持ちを伝えます。

「そんなこと言うのは良くないよ」と相手を非難すると、「本当に離婚したいんだからしょうがないだろう」と、また違う方向に行ってしまうこともある。

そうではなくて、

「本当に離婚したいなら、それは考えないといけない。でも、本当に離婚したいわけではないなら、その言葉を出さないで欲しい。何が嫌なのかを、もう少し分かりやすく伝えてほしい。だって私はあなたと離婚したいわけじゃなくて幸せな結婚生活を送りたいと思っているんだから。」

と、自分の本当の願いから伝えていくんです。

笠原

相手を正そうとするのではなく、自分がどう感じていて、どうしてほしいのかを伝える。

石井さん

そうです。

相手もヒートアップしていて、こちらもヒートアップしたら、いいことはほとんどないんですよ。

だから、いかに自分がニュートラルな状態で、本当の願いから伝えられるか。

これは今、婚活している皆さんにも伝えています。

笠原

自分自身を知ることも大切になりそうですね。

石井さん

すごく大切です。

相手を理解する前に、まず自分がどこまで本当に自分を分かっているのか。

そして、その自分をどこまで相手に出せているのか。

上辺だけで付き合っていたら、お互いに「相手のことをよく知っている」と思っていても、実は浅い関係かもしれません。

だからまず、「自分を知る」。その本当の自分から対話をしていく。

そこが大事だと思っています。

「これを独身のときに知っていたら」と思った

笠原

GFLを学んで夫婦関係が変わったことが、その後、結婚相談所を始めることにつながったのでしょうか。

石井さん

そうなんです。

夫婦関係が本当に驚くほど良くなって、「これはすごい」と思いました。

そのときに、

「これをもっと早く知っていればよかった」

と思ったんです。

独身時代に、自分というものをもっと分かっていたら、もっと早くに結婚できていたかもしれない。

結婚してすぐに、離婚問題で大騒ぎすることもなかったかもしれない。

それくらい、「もっと早く知りたかった」と思ったんですね。

笠原

そこで、独身の人に届けたいと思った。

石井さん

はい。

でも私がパートナーシップの講師になって、講座だけを教えるというよりも、実際にパートナーを探している人にお相手をご紹介しながら、その中で一緒に学んでもらう方がより伝わるんじゃないかと思ったんです。

私自身、結婚相談所で婚活した経験もありましたから。

「結婚相談所にGFLを組み入れればいいんじゃないか」

と思って、GFLの先生に相談して、GFL Mariageを立ち上げました。

笠原

つまりGFL Mariageは、GFLの考え方を実際の婚活に取り入れた相談所なんですね。

石井さん

そうなんです。

お相手がいない人に、お相手をご紹介する。

その中で実際に誰かと出会って、話して、うまくいったり、うまくいかなかったりする。

そのタイミングで学ぶからこそ、より理解出来ることがあると思うんです。

私が「これを独身のときに知りたかった」と思ったものを、今婚活している人に届けたいんです。

「穏やかな家庭がほしい」では、まだぼんやりしている

笠原

実際の婚活支援では、最初にどんなことをするのでしょうか。

石井さん

私のところでは、「ビジョン」をすごく大切にしています。

ビジョンって何かというと、

「あなたが本当にパートナーシップにおいて願っていることは何ですか?」

ということ。

「これがあったら最高に幸せ」と思えるものを、ワンシーンで描いてもらうんです。

笠原

ワンシーンというのは、かなり具体的に描くのでしょうか。

石井さん

かなり具体的です。

最初は皆さん、ぼんやりしているんですよ。

「穏やかで温かい家庭を築きたいです」とか。

でも私は、

「穏やかで温かい家庭って、どういう状態ですか?」

って聞き返しています。

笠原

確かに、「穏やかな家庭」だけだと、人によって全然違いますね。

石井さん

そうなんです。

例えば掘り下げていったら、

「休みの日に、子どもと夫婦の3人で手を繋いで公園を歩いている。帰りにパン屋さんに寄って、それぞれ好きなパンを買って、少しずつ分けながら食べている。その時に心がポカポカして温かくなり、じんわりと喜びがこみあげて来る」

みたいなシーンになる人もいる。

その人にとっては、それが本当に最高に幸せな結婚生活なんですよね。

そこまで具体的に描くんです。

笠原

いわゆる「年収はいくら」「身長は何センチ」という条件とは、かなり違うところから相手を考える。

石井さん

そうですね。

条件ももちろんあると思いますけど、その条件の人と何がしたいのかなんですよ。

例えば「すごく可愛い女性がいい」と言うなら、じゃあ、その可愛い女性と何をしているときに自分は幸せなのか。

そこまで考えていく。

自分でも本当に欲しいものが分かっていないことがあるので、何回も書き直してもらうんです。

笠原

何回もですか。

石井さん

何回もです。

人によっては、そこだけで3カ月くらいかかったこともあります。

婚活している間、ずっと描き直す人もいます。

でも、「これだ」と自分の中でピタッとくるものが見つかると、不思議とすぐにそういった人と出会います

笠原

つまり、相手を探す前に、自分にとって何が最高に幸せと感じるのかを知る。

石井さん

そうです。

本当に欲しいものが曇っていると、格好をつけて、本当は望んでいないことを書いてしまったりする。

そうすると、相手が現れても「この人なのかな」と分からないんですよ。

だから、「自分が本当に何を欲しいと思っているのか」を一緒に探していくんです。

カウンセリングする石井さん

コーヒーか紅茶か。小さな選択から「自分の幸せ」を知る

笠原

「自分にとっての幸せを知る」と言っても、実際には難しそうですね。

石井さん

難しいんですよ。

幸せが何かって、みんな意外と分かっていないんです。

本当に自分が望んでいるのは何なのか。それは人によって全然違う。

例えば、お金持ちの人と結婚して専業主婦になったとしても、それで満たされない人だっている。

じゃあ、あなたはどうしたら幸せなの?っていうことを、結婚する前に知っておけたらいいですよね。

笠原

かなり大きな問いですよね。

石井さん

でも、いきなり大きなところから考えなくてもいいんですよ。

自分がどうやったら幸せなのかを、本当に小さなところから鍛えていく」んです。

例えば、「今日はコーヒーが飲みたいのか紅茶がいいのか、レモネードがいいのか」。そんなところからなんです。

仕事でもそう。

こっちとこっちだったら、どちらの方が自分はしっくり来るのか。

自分がより豊かで、満ち足りた方を選択していく。

そういうことを重ねていくんです。

笠原

婚活の条件を考える以前に、「自分は何を心地いいと思う人なのか」を知れたらいいということですね。

石井さん

そうですね。

自分の中に基準がなかったら、周りの意見を採用するしかなくなっちゃうんですよ。

「こういう人と結婚した方がいい」

「こういう条件の人となら幸せになれる」

って。

でも、周りから見て良い結婚と、自分が幸せだと感じる結婚は同じとは限らない。

そこを自分で分かるようになってほしいんです。

婚活中から、二人の関係をつくる練習をする

笠原

ビジョンが見えて、実際にお相手と出会った後は、どんなことを大切にしていますか。

石井さん

自分の願いを、きちんと相手に伝えることですね。

婚活って、どうしても相手を評価する時間になりやすいと思うんです。

「ここが合わない」

「これが足りない」

「もっといい人がいるかもしれない」

って。

でも最初から何もかもぴったり合う人なんて、なかなかいないですよね。

そこで何か違いが出てきたときに、自分は何を望んでいるのかを感じて、それを相手に伝える。

相手が何を望んでいるのかも聞いてみる。

そういうことを婚活中からやっていくんです。

笠原

交際中のすれ違いも、より幸せな結婚生活につながる経験になる。

石井さん

そうだと思います。

結婚したら急にコミュニケーションが上手になるわけじゃないですから。

むしろ近い関係になればなるほど、いろいろな反応が出てくる。

だから、お付き合いしている段階から、自分の本当の気持ちを知って、それを相手に伝える。

相手のことも、上辺ではなく深く知っていく。

それを練習してほしいですね。

笠原

石井さん自身が、結婚してから苦労したことを、婚活中から少しずつ身につけてもらうイメージでしょうか。

石井さん

そうですね。

私が「これを独身のときに知りたかった」と思ったものを、できるだけ早い段階で知ってもらいたい。

もちろん、知っているから何も問題が起きないわけではありません。

問題は起きます。

でも、問題が起きたときにどう扱うかを知っているだけでも、全然違うと思っています。

誰かと長く一緒にいる。そのことに「コミットする」のが、私にとっての結婚

笠原

お話を伺っていると、石井さんにとって「結婚」は、婚姻届を出すことだけではないように感じます。

石井さん

そうですね。

極端に言えば、その人が本当に幸せなのであれば、別に結婚しなくてもいいと私は思っています。

私がやりたいのは、結婚そのものを全員に勧めることではないんです。

誰か大事な人が欲しい。その人との関係を、より良く、幸せなものにしていきたい。

そういう人たちの幸せの形を一緒に探っていきたい。

私は「パートナーシップの相談所」でありたいと思っています。

笠原

石井さんの中では、「結婚」と「パートナーシップ」はどのようにつながっているのでしょう。

石井さん

本当は、誰にでも、大切な人と結ばれたいとか、深く関わりたいとか、そばにいてほしいとか、そういう気持ちがあると思うんです。

でも、それと「結婚」という言葉がうまく結びついていない人もいる。

だから私は、その人が本来持っている願いをちゃんと外に出して、それをパートナーシップにつなげていきたい。

「たった一人の大切な人と長く一緒にいるということ。そこにコミットするということを、私は結婚と呼んでいます」

笠原

「結婚相手を見つける」だけではなく、その人との関係に長く向き合っていくところまで含めて結婚なんですね。

石井さん

そうですね。

私自身も、結婚したら全部うまくいくと思っていたけれど、実際にはそこからいろいろなことが始まりました。

近い関係だからこそ傷つくし、喧嘩もする。

自分が、相手とこんなにも違うのだと分かる場面もたくさんある。

大切な人と長く一緒にいるって、簡単なことじゃないと感じています。

だからこそ、結婚できたかどうかだけじゃなくて、その人との関係が良好で、幸せな状態が続いていくことが大事だと思っています。

パートナーを見つけて、その人とどう幸せに生きていくのか。

そこまで一緒に考えていける人でありたいですね。

「幸せが続く結婚」は、自分の幸せを知るところから始まる

石井さんが婚活者に伝えたいのは、「結婚すれば幸せになれる」という物語ではない。

好きな相手を見つけても、二人の考えがすべて一致するわけではない。近い関係だからこそ傷つき、すれ違うこともある。

だからこそ、自分は本当は何を望んでいるのかを知り、それを相手に伝える。相手の願いにも耳を傾け、自分の中で何が起きているのかにも目を向ける。

その土台になるのが、「自分にとって何が幸せなのか」を知ることだ。

休日に家族で公園を歩くことかもしれない。今日飲みたいものが、コーヒーか紅茶なのかを選ぶことから始まるかもしれない。

周囲から見た「良い結婚」ではなく、自分自身が満ち足りて幸せだと思える人生を知る。その先に、誰とどんな関係を築きたいのかが見えてくる。

石井さんにとって結婚とは、大切な人と長く一緒にいることにコミットすることである。

GFL Mariageが届けようとしているのは、結婚という一日の出来事ではない。

自分にとっての幸せを知り、大切な相手と対話しながら、その幸せを二人で育て関係性を続けていくこと。

それが、石井さんの考える「幸せが続く結婚」なのだ。

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