恋愛経験が少なくても、分からないことは一つずつ覚えていけばいい。一方で、誰からも好かれる「恋愛上手」になる必要はないと、オハナマリッジ浦和代表・さとうもとみさんは話します。自身も恋愛に不器用だった経験を持つさとうさんに、その人らしい良さを残したまま「この人がいい」と思える一人に出会う婚活について伺いました。
〈聞き手=笠原 佳介〉
今回話を聞いた人
オハナマリッジ浦和 / 代表カウンセラー
さいたま市浦和区の結婚相談所「オハナマリッジ浦和」代表。2011年より婚活支援に携わり、現在は日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー、社会福祉士としての知見も生かしながら、一人ひとりの気持ちに寄り添った婚活を支援している。
好きな人がいるのに、うまく話しかけられない。
オハナマリッジ浦和のさとうもとみさんにも、そんな時期があった。
同じコミュニティに好きな人がいても、懇親会ではあえて別のテーブルに座ってしまう。紹介で出会ってもうまくいかず、一人暮らしの部屋で「このままずっと一人なのかな」と不安になったこともあったという。
今、さとうさんは恋愛経験の少ない人たちの婚活を支援している。
お見合いやデート、LINEの送り方など、分からないことは一つずつ覚えていけばいい。一方で、さとうさんは「恋愛上手になる必要はない」と話す。
誰からも好かれるのではなく、自分の良さを分かってくれる一人と出会えばいい。
自身も恋愛に不器用だったさとうさんに、婚活で身につけた方がいいことと、無理に変えなくてもいいこと。そして「大好きな人との結婚」について聞いた。
好きな人と同じテーブルにも座れなかった。さとうさん自身も恋愛に不器用だった
今こうしてお話ししていると、人とのコミュニケーションが苦手だったようには見えないのですが、昔から人付き合いや恋愛は得意だったんですか。
全然ですよ(笑)。
私は本当に不器用でした。
結婚したいけれど、どこで出会えばいいのかも分からなかったし、今振り返れば「やらかしたな」ということもたくさんありました。
たとえば、どんな感じだったんでしょうか。
あるコミュニティに好きな人がいたとしても、話しかけられないんです。
懇親会があっても、好きな人と同じテーブルには座れなくて、わざわざ違うテーブルに行っちゃうような感じ。
恥ずかしくて話せないんですよね。
合コンも得意じゃなかったですし、今考えると、相手の気持ちが下がってしまうような言動もいろいろしていたと思います。
「好きだから近づく」ではなくて、好きだからこそ避けてしまう感じですか。
そうそう。
自分から誘ってしまったり、「これは言わない方がよかったな」ということを言っていたり。
今なら分かるんですけど、当時は全然分からなかったんですよね。
それであるとき、「これじゃ駄目だ」と思って、本を読んだんです。
恋愛やコミュニケーションについての本ですか?
そうです。
「なるほど、こういうふうに受け取るんだ」とか、「こういう伝え方をした方がいいんだ」とか。
読んだことを少しずつ実践してみたら、うまくいくようになって。
その後、結婚相談所を始めてからは心理学も学んできました。
結婚したいという気持ちは、当時から強かったのでしょうか。
ありましたね。
一人暮らしをしていたので、夜に布団に横になると、天井を見ながら「このまま一生一人なのかな」って、急に不安になることもありました。
紹介してもらって出会っても、うまくいかなかったら「また駄目だった」と落ち込む。
焦りもあったし、寂しさもあったし、どうしたらいいか分からなかった。
だから今、そういう状態にいる人の気持ちは分かると思います。
「広くモテる必要はない」。分かってくれる一人を見つければいい
ご自身は本を読んで、人との関わり方を少しずつ学ばれたわけですよね。
そうすると、会員さんにもまず「恋愛が得意な人」に近づいてもらうことが大切なのでしょうか。
私は、広くモテることを目指さなくていいと思っているんです。
結婚なので、自分に合う一人が見つかればいいじゃないですか。
だから恋愛上手になるとか、いろいろな恋愛テクニックを身につけて、誰からも好かれるようになる必要はないと思っています。
では、どんな部分を大切にされていますか。
優しさだったり、相手を思いやる気持ちだったり、素直さだったり。
真面目さ、正直さ、明るさ、ユーモアとか、人それぞれ何かしらいいところがあると思うんです。
誰でも持っている、その人の素晴らしい部分を分かってくれる人を一人見つければいい。
だから、そんなに恋愛上手じゃなくても全然大丈夫です。
私自身も人間関係は不器用ですし(笑)。
「誰からも好かれる人になる」より、「自分の良さを分かってくれる人と出会う」ということでしょうか。
そうですね。
もちろん身だしなみを整えることは大切ですよ。
でも、だからといって「モテる見た目」を目指す必要はない。
多くの人を狙うわけではないので、「あなたに合う一人を見つけましょう」という感じなんです。
デートでパスタを巻くことさえ不安。分からないことは一つずつ覚えればいい
恋愛経験がほとんどない方の場合、実際の婚活ではどんなところで困るのでしょうか。
本当にいろいろですよ。
一度もお付き合いしたことがない方だと、異性と二人で食事をしたことがほとんどない場合もあります。
そうすると、初回デートでランチするだけでも大変なんですよ。
「食べ方がおかしくないかな」とか、「パスタをうまく巻けなかったらどうしよう」とか。
いろいろ気になって、デートそのものを楽しめなくなってしまう。
こちらが想像する以上に、一つひとつのことが不安になるんですね。
そうなんです。
だからサポートには、技術面と心理面の両方があると思っています。
技術面なら、お見合いではどんな話をするのか、最初のデートはどのくらいの時間がいいのか、お食事代をどう考えるのかとか。
LINEのペースや、相手に伝わりやすい話し方を一緒に考えることもあります。
かなり具体的なところまで伝えるんですね。
デートしたことがない方には、そういう細かいことも一つずつお伝えします。
でも心理面もすごく大事です。
「好かれなきゃ」と思いすぎなくていいとか、まずは自分も楽しもうとか。
婚活のことばかり考えていると疲れちゃうので、仕事や趣味にもちゃんと時間を使ってもらいます。
土日を全部婚活で埋めないで、片方は自分の時間にするとか。
短期間で一気に詰め込むより、続けられる状態を作る。
そうですね。
婚活って長くなることもあるので、疲れて辞めてしまったら続かない。
私はあまり「婚活だけにフルコミットしてください」という感じではないです。
その人に合ったペースで続けてもらいたいです。
「こうすれば落とせる」ではない。コミュニケーションの土台は誠実さ
今のお話だけ聞くと、LINEやデートでの振る舞いなど、「恋愛テクニック」と呼ばれるものにも少し近く感じます。
さとうさんの中では、何が違うのでしょうか。
私は「テクニック」というより、コミュニケーションの技術だと思っているんです。
たとえば、相手に何か希望を伝えるときに、遠回しに言って察してもらおうとするより、「私はこっちがいい」とちゃんと伝えた方が分かりやすいこともありますよね。
そういう、相手に伝わるための方法は知っていた方がいい。
でも「こう言えば相手の心を動かせる」とか、「こうすれば相手が落ちる」みたいなこととは違うんです。
同じ言葉や行動でも、出発点が違うんですね。
そうですね。
その人が好きだから、その人に喜んでほしいと思う。
そこに相手への尊重や誠実さがあれば、それは単なるテクニックではなくて、思いやりのある言動になると思っています。
表面的な受け答えを駆使するより、本当にその人に興味を持って話を聞く。
その人を知ろうとするし、自分のことも知ってもらう。
結婚相談所では、そういう素直な人の方がうまくいくと思います。
コミュニケーションの方法は学べるけれど、その中心にあるのは人への向き合い方なんですね。
そうですね。
不器用でも、やっぱり最後は誠実さだと思います。
無理して別の人になる必要はないんです。
「それ、すごく素敵なところだよ」。本人が気づいていない良さを見つける
恋愛経験が少なかったり、婚活がうまくいかなかったりすると、「自分には魅力がない」と思ってしまう方もいそうです。
多いですよ。
自分の欠点を聞くと、いろいろ出てくるんです。
でも「じゃあ、いいところは?」って聞くと、なかなか出てこない。
だから私が、普段接していて気づいたことを伝えるようにしています。
たとえば、どんなことですか。
以前、私にお土産をくださった会員さんがいて、その中にちょっとしたメモを入れてくれていたんです。
私はそれがすごく嬉しくて。
「こういう心遣いが自然にできるって、すごく素敵なところだよ」って伝えました。
本人にしたら、そんなに特別なことだと思っていないんですよね。
本人にとっては普通だから、魅力だと気づかない。
そうなんです。
ずっと同じ会社で働いている人にも、「それだけ続けられるって、継続力や協調性があるということだよね」と伝えます。
本人は一度も転職していないのが普通だから、それを長所だと思っていない。
お料理ができる人も、「普通にやっています」と言うけれど、それはできない人からしたらすごいことですよね。
だから、「あなたにとって普通でも、それはあなたの良さなんだよ」ということを伝えていきます。
そうやって、少しずつ自信を持ってもらいたいんです。
「大好き」は、ドキドキだけじゃない。一緒にいて自然だと思える人
これまでたくさんの成婚を見てきて、「この二人は幸せそうだな」と感じるのは、どんなカップルですか。
成婚した方たちがよく言うのは、「一緒にいて自然だった」とか「楽だった」という言葉なんですよ。
私は、それってすごく大事だと思っています。
恋愛でイメージする「ドキドキする」「ときめく」とは少し違うんですね。
もちろん、すごくときめいて結婚する人もいます。
でも、私が思う「大好きな人との結婚」は、それだけではないんです。
その人自身が好きだったり、一緒にいて楽しかったり、自然だったり、幸福感があったり。
「条件的には合っているから」とか、「自分にはこのくらいかもしれない」と納得しきれないまま進むのではなくて、「この人がいい。一緒にいたい」と思えること。
それが私の考える大好きな人との結婚ですね。
条件が一致しているだけではなく、「この人と一緒にいたい」という気持ちがある。
そうですね。
条件だけで結婚することを否定するつもりはないです。
でも、私は「好きな人と人生を一緒に歩いていきたい」という方を応援したい。
成婚した方が「やっとこの人に会えた」「これからの結婚生活が楽しみ」と晴れやかな顔をしていると、やっぱり嬉しいですよ。
そういう人たちを見ていると、結婚っていいなと思います。
結婚して終わりではない。30年近い結婚生活で感じる「最後は感謝」
さとうさんご自身は、結婚生活が30年近く続いているんですよね。
長く一緒に暮らしてきて、大切だと感じることは何でしょうか。
最後は、感謝になってしまうと思います。
パートナーがいてくれることって、当たり前じゃないんですよね。
婚活中は、どうしても相手の足りないところが目につきやすいですよね。
そうなんです。
「デートプランを考えてくれない」とか、「お店を予約してくれなかった」とか、「前に話したことを覚えていなかった」とか。
足りないところを見ようと思ったら、いくらでも見つかります。
でも、結婚して相手がそこにいてくれること自体、当たり前ではないんですよ。
一日無事に過ごして、一緒にいられる。
そう思うと、感謝することってたくさんあります。
だから成婚した方にも、結婚したら感謝の気持ちを忘れないでね、と伝えています。
その後の結婚生活まで考えると、婚活中の相手の見方も変わってきそうです。
そうだと思います。
結婚相手って、自分の都合のいいように動く人ではないんですよね。
「ここを直してくれたら結婚してもいい」というより、その人のことを尊重して、そういうところも含めて「この人でいい」「この人がいい」と思えるかどうか。
結婚してからも、相手を自分の思い通りに変えようとするのではなくて、お互いを尊重することが大事だと思います。
恋愛上手かどうかよりも、不器用でも、そういうコミュニケーションを取りながら一緒に生きていけることの方が大切なんじゃないでしょうか。
恋愛上手じゃなくても、“この人がいい”と思える一人に出会える
取材の中で、さとうさんは何度か「自分も不器用だから」と笑っていた。
好きな人に話しかけられなかったことも、紹介がうまくいかず落ち込んだこともある。だからこそ、恋愛経験が少ない人がつまずく小さなことも、「分からないなら一つずつ覚えればいい」と考えている。
でも、その人自身まで別人になる必要はない。
お土産に一言メモを添えられること。長く同じ仕事を続けてきたこと。本人にとっては普通のことでも、誰かにとってはその人を好きになる理由になるかもしれない。
そして、30年近い自身の結婚生活について尋ねたとき、さとうさんは「最後は感謝になってしまうと思います」と話していた。
恋愛上手になることより、目の前の一人を大切にできること。
さとうさんが支えようとしているのは、そんな関係を始めるまでの時間なのかもしれない。



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