理系男性の“わからない”を翻訳する。河合真理さんが考える、結婚相談所は「自分を見つめる場所」

理系男性専門の結婚相談所「ひよくれんり」を運営する河合真理さんに、理系男性の婚活で起きやすい“わからない”をどのように言葉にし、成婚後の結婚生活まで見据えて支えているのかを伺いました。

〈聞き手=笠原 佳介〉

今回話を聞いた人

河合真理
河合 真理
Mari Kawai

理系男性専門結婚相談所「ひよくれんり」 / 代表・仲人

東京都世田谷区生まれ。大学卒業後、ウェディングプランナーとしてキャリアをスタート。パーク ハイアット 東京の開業準備室に招かれ、日本初のフルオーダーメイドウェディングの仕組みづくりに携わる。約500組のカップルの悩み相談を受ける中で、二人が互いの違いを受け入れていくためのカウンセリングを実施。その後、「理系男性を笑顔にしたい」という思いから、世田谷で結婚相談所を開業した。

理系男性専門の結婚相談所「ひよくれんり」を運営する河合真理さん。

河合さんが向き合っているのは、単に「恋愛が苦手な男性」ではありません。

お見合いで相手が笑顔だったから、うまくいったと思っていた。

「楽しかったです」と言われたから、次につながると思っていた。

でも結果は、交際不成立だった。

なぜ断られたのか。

どこで会話がずれたのか。

自分の優しさや誠実さを、どうすれば相手に届く形で伝えられるのか。

そんな理系男性の“わからない”を、河合さんは一つひとつ言葉にしていきます。

その原点にあるのは、幼い頃から理系男性と文系女性のあいだで、自然と“通訳”のような役割を担ってきた経験でした。さらに、ウェディングプランナーとして結婚する二人の価値観の違いを見つめ、すり合わせを支えてきた経験も、今の支援につながっています。

河合さんは、ご自身を「宣伝が得意なタイプではない」と語ります。結婚相談所を始めた頃、本当に知りたかったのは集客の方法ではなく、目の前の会員さんをどう前向きにできるか、どうすればあと一歩を踏み出せるように支えられるかでした。

結婚相談所は、ただ相手を紹介する場所ではない。
婚活を通して、自分がどんな人間で、どんな人と生きていきたいのかを見つめる場所でもある。

そう語る河合さんは、理系男性の婚活をどのように見つめ、どのように支えているのでしょうか。

今回は、ひよくれんりの河合真理さんに、理系男性専門で支援する理由、仲人として大切にしていること、そして成婚の先にある結婚生活まで見据えた婚活のあり方について伺いました。

「理系男性専門」は、後から決めた肩書きではなかった

笠原

河合さんは今、「理系男性専門」として支援されています。この方向性は、どのように生まれたのでしょうか。

河合さん

私は、最初から理系男性を支援したかったんです。

ホームページを作ったときには、いろいろな見せ方を提案されたこともありました。でも、自分の中ではずっと「私がやりたいのは理系男性の支援だ」という思いがありました。

笠原

なぜ、そこまで理系男性にこだわりがあったのでしょうか。

河合さん

私の家族や親族には、理系男性が多かったんです。父も兄も、周りの男性たちも理系が多い環境で育ちました。

一方で、私は文系なんですね。

そうすると、小さい頃から「どうしてこの話し方だと伝わらないんだろう」「どう言えば分かってもらえるんだろう」と考えることが多かったんです。

笠原

理系男性と文系女性の間で、言葉や感覚の違いを感じていた。

河合さん

そうです。

兄から「お前の話し方はよく分からない」と言われることもありました。でも私からすると、「分からないと言われることが分からない」という感覚なんです。

そこから、どうしたら理系男性に伝わるのかを考えるようになりました。

逆に、兄や周りの理系男性が恋愛で悩むようになると、「それは女性にはこう見えるよ」「その言い方だと伝わらないかもしれないよ」と感じることもありました。

笠原

かなり幼い頃から、通訳のような役割をされていたんですね。

河合さん

そうかもしれません。

理系男性に伝わる日本語と、文系女性に伝わる日本語。その両方を、小さい頃から行き来していたのだと思います。

でも、それは私にとっては普通のことだったんです。自分の家庭の中で自然にやっていたことなので、特別なことだとは思っていませんでした。

笠原

それが、仲人になってから仕事としてつながったんですね。

河合さん

そうですね。

結婚相談所を始めて、理系男性と婚活現場で向き合うようになったときに、「これは昔から自分がやっていたことだ」と感じました。

男性側の意図と、女性側の受け取り方がずれている。
どちらかが悪いわけではないのに、うまく伝わらない。

そこで通訳が必要になるんです。

面談中の河合さん
理系男性の婚活を支援する河合真理さん

ウェディングプランナー時代に見えた、結婚生活のすり合わせ

笠原

河合さんは、仲人になる前にウェディングプランナーもされていたと伺いました。その経験も、今の支援につながっていますか。

河合さん

とてもつながっています。

ウェディングプランナー時代も、私は通訳をしていたと思います。

結婚が決まったお二人って、「好きになったのだから分かり合えているはず」「結婚しようと思ったのだから価値観が合っているはず」と思っていることが多いんです。

でも、そんなはずはないんですよ。違う家庭で育った、違う人間同士ですから。

笠原

好きだからこそ、違いが見えたときに驚いてしまう。

河合さん

そうです。

恋愛中って、私は“晴れ”の時間だと思っているんです。デートでは、お互いに少し装いますよね。嫌なことがあっても、相手に会うときには笑顔でいようとする。相手も同じです。

つまり、晴れの日の姿を見ながら、「この人との日常もきっとこうだ」と思って結婚を決めることがあるんです。

でも、結婚生活は日常です。晴れの日だけではありません。

笠原

結婚式の準備で、その違いが出てくる。

河合さん

出てきますね。

たとえば、結婚式のお花の色を決める場面があります。女性は「ピンクがいい」と思っている。会場全体が温かく見えるし、自分のドレスにも合うと思っている。

一方で男性は、「ブルーがいい」と言う。女性からすると、「え、ブルーなの?」となるわけです。自分と同じようにピンクを選んでくれると思っていたから、驚いてしまう。

でも男性に理由を聞くと、「自分がブルーが好きだから」と言うんです。会場全体のことまで考えていたわけではなく、聞かれたから自分の好きな色を答えただけだったりする。

笠原

同じ質問に答えているようで、見ているものが違うんですね。

河合さん

そうなんです。

そこで私が間に入って、「なぜピンクがよかったんですか」「なぜブルーがよかったんですか」と聞いていく。そうすると、女性は会場全体やドレスとの相性を考えていたことが分かる。男性は自分の好きな色を答えただけだと分かる。

そこで初めて、お互いに「相手はそういう視点で見ていたんだ」と理解できるんです。

笠原

二人の見方や考え方が違っていたことを知るんですね。

河合さん

はい。

結婚式って、結婚生活と似ているんです。誰を呼ぶのか、何を食べるのか、どんな時間にするのか。二人で一つのプロジェクトを進めていく。

その中で意見が違うことは当然あります。違いがあること自体が悪いのではありません。違いが出たときに、どうすり合わせるかが大事なんです。

私はウェディングプランナー時代から、結婚式を成功させるだけではなく、その先の結婚生活にもつながるようなすり合わせを意識していました

理系男性の“わからない”を、婚活の現場で翻訳する

笠原

婚活の現場でも、やはり理系男性と女性の間にすれ違いは多いのでしょうか。

河合さん

多いですね。

理系男性には、誠実だったり、一つのことを深く考えられたり、結婚生活に向いている面を持っている方も多いと思っています。

ただ、婚活の初期段階では、そうした良さが相手に伝わる前に、会話の受け取り方や表現の仕方ですれ違ってしまうことがあるんです。

笠原

本来の良さが伝わる前に、受け取り方の違いで誤解が生まれてしまう。

河合さん

そうです。

たとえば、お見合いで女性がニコニコして話を聞いてくれたとします。男性は「楽しかったです」と言われる。そうすると、「うまくいったのかな」と思うことがあります。

でも女性側からすると、それはその場を気持ちよく過ごすための配慮だったり、礼儀だったりすることもあるんです。

笠原

お相手の笑顔や「楽しかったです」という言葉を、そのまま好意として受け取ってしまうことがある。

河合さん

ありますね。

もちろん、本当に楽しかった場合もあります。でも、お見合いの場での笑顔には、いろいろな意味があります。その場を壊さないために笑っていることもあるし、悪い人ではなかったから丁寧に接していることもある。

だから私は、お見合いの後にかなり細かく聞くことがあります。

何を話したのか。
相手はどんな反応をしていたのか。
お茶はどれくらい飲んでいたのか。
どんなタイミングで笑っていたのか。
会話は一方通行になっていなかったか。

そうやって一つひとつ振り返るんです。

笠原

お見合いの“結果”だけでなく、その中で何が起きていたのかを一緒に見るんですね。

河合さん

理系男性は、「なぜうまくいかなかったのか」を知りたい方が多いんです。理由が分かれば、次に活かせる。

でも、婚活では理由がはっきり伝えられないことも多いですよね。相手の方も、悪く言いたいわけではありませんから。

だからこそ、仲人が間に入って交通整理をする
その人の何が悪いと決めつけるのではなく、何が伝わらなかったのか、どこで認識がずれたのかを一緒に見ていく。

それが私の役割だと思っています。

会話もデートも、理系男性に伝わる“型”に変える

笠原

河合さんの支援は、かなり具体的ですね。理系男性に対して、会話やデートの仕方も細かく伝えるのでしょうか。

河合さん

伝えます。

ただ、「もっと共感して」「もっと楽しく話して」と言っても、分からない方もいます。感覚で言われても、何をすればいいのか分からないんです。

だから私は、できるだけ“型”にして伝えるようにしています。

笠原

型にして伝えるとは何でしょうか。

河合さん

たとえば、以前からインプロの考え方を取り入れていました。インプロというのは即興劇の手法なのですが、人の会話って台本がないですよね。相手が何を言うか分からない中で、とっさに受け答えをしなければいけない。

それが苦手な方もいます。

笠原

会話自体が、即興ですもんね。

河合さん

そうです。

そこで「イエスアンド」という考え方を使います。相手の言葉を一度受け止めて、そこに一つ自分の言葉を足す。

たとえば女性が「今日、仕事で疲れちゃって」と言ったとします。そのときに、すぐ自分の話に持っていくのではなく、「疲れたんですね」と受け止める。そして、「そういう日は甘いものが食べたくなりますよね」と少し足してみる。

それだけでも、相手は「聞いてもらえている」と感じやすくなります。

笠原

感覚的な共感を、手順として伝えているんですね。

河合さん

そうです。

理系男性は、一つの方程式が分かると深掘りできる方が多いと感じます。一度成功体験ができると、「こうすれば相手は話しやすくなるんだ」と理解して、自分で応用していける方が多い。

だから、できるだけ再現できる形にするんです。

笠原

お見合い前にも、会話の準備はされるのでしょうか。

河合さん

します。

プロフィールを一緒に見て、「この方には何を聞いたら話が広がりそうか」を考えます。

趣味が書いてあったとしても、ただ「趣味は何ですか」と聞くのではなく、「どうしてそれを好きになったんですか」「どんなところが面白いんですか」と聞いてみる。そうすると、相手も自分の話をしやすくなりますよね。

笠原

プロフィールを、単なる情報ではなく会話の入口として読む。

河合さん

そうです。

それから、理系男性の中には、連想ゲームのような会話が苦手な方もいます。女性が何か話したときに、そこから次の話題につなげるのが難しい。

でも、できないわけではないんです。普段そういう頭の使い方をしていないだけ。

だから、「喜怒哀楽の言葉だけは拾ってみよう」と伝えることもあります。嬉しかったのか、悲しかったのか、楽しかったのか、苦しかったのか。そこを拾って返すだけでも、相手は話しやすくなるんです。

笠原

そういった聞き方を知るだけで、会話が変わるんですね。

河合さん

そうですね。

理系男性は、「話しかけ方が分からない」と言うことがあります。でも私は、まずは話しかけ方より聞き方だと思っています。

面白い話をしなくてもいい。
相手の話をちゃんと聞ける人は、実はとても少ないんです。

聞き方を知るだけで、関係は変わります。

結婚相談所は「自分を見つめる場所」

笠原

河合さんにとって、結婚相談所とはどのような場所なのでしょうか。

河合さん

私にとって結婚相談所は、理系男性が女性の世界や考え方を理解して、「ああ、なるほど」と思えるようになる場所です。

そして、自己実現のヒントを得られる場所でもあると思っています。

笠原

自己実現のヒント、ですか。

河合さん

はい。

結婚相談所というと、相手を紹介してもらうだけの場所と思われるかもしれません。もちろん出会いの機会をつくることも大切です。

でも、それだけではないんです。

婚活をしていると、自分が何を大切にしているのか、どんな人と暮らしたいのか、どんな結婚生活を送りたいのかを考えることになります。

「いい人なんだけど、なぜか進まない」
「楽しかったはずなのに、次につながらない」
「自分は何がいけなかったのか分からない」

そういう経験を一つひとつ振り返ることで、自分のことが見えてくるんです。

笠原

婚活は、相手を探す時間であると同時に、自分を知る時間でもある。

河合さん

そう思います。

でも婚活では、明確な正解がないことも多いですよね。相手の気持ちもありますし、タイミングもあります。

だからこそ、私は一緒に整理します。何が起きたのか。どこですれ違ったのか。次にどうすればいいのか。

それを繰り返す中で、少しずつ自分に合う人、自分に合う進め方が見えてくるんです。

笠原

仲人は、相手を紹介するだけではなく、自己理解の水先案内人でもあるんですね。

河合さん

会員さんには、婚活を通して自分を見つめてほしいと思っています。

理系男性は、実験や検証に強い方が多いですよね。結果があれば、次に何を変えればいいか考えられる。婚活も同じで、うまくいかなかった経験を「自分はダメなんだ」と受け取るのではなく、次に進むための材料にしてほしい。

その経験を一緒に整理して、「これは変えられるところだよ」「ここはあなたの魅力だから大切にしていいよ」と伝えるのが、仲人の役割だと思っています。

成婚の先にある暮らしまで。喧嘩の“戻り方”を決めておく理由

笠原

河合さんのお話を聞いていると、成婚そのものだけでなく、その後の結婚生活まで強く意識されている印象があります。

河合さん

結婚はゴールではないですからね。

もちろん成婚は大切です。でも、本当に大事なのは、その後の生活です。結婚式の翌日から、何十年と続く暮らしがあります。

だから私は、成婚退会前にパートナーの方といろいろな話をしてもらいます。喧嘩の仕方や、仲直りの仕方まで決めておくこともあります。

笠原

仲直りの仕方ですか。

河合さん

はい。

喧嘩をしないことが良いわけではないんです。興味がなければ喧嘩にもなりません。大切なのは、喧嘩をしたあとにどう戻れるかです。

たとえば、言葉で話したい人もいれば、少し時間を置きたい人もいます。抱きしめてほしい人もいれば、そっとしておいてほしい人もいる。

それを知らないまま結婚生活に入ると、すれ違いが大きくなってしまうことがあります。

だからといって、喧嘩している最中に「じゃあ仲直りの仕方を決めよう」と言っても難しいですよね。感情的になっているときには、冷静に話せません。

だから、仲が良いときに決めておくんです。
喧嘩したらどうするのか。
どれくらい時間を置きたいのか。
どんな言葉があると戻りやすいのか。

そういう“戻り方”を、結婚前に話しておくことが大事なんです。

笠原

喧嘩を避けるのではなく、仲直りの方法を知っておくんですね。

河合さん

はい。

結婚生活は、違う人同士が一緒に暮らすことです。違いがあるのは当たり前です。

でも、違いが出たときに「この人とは合わない」とすぐに終わらせるのではなく、「何が違ったのか」「どうすれば一緒にいられるのか」を話し合えることが大切です。

婚活中からその練習をしておくことが、結婚後にもつながると思っています。

笠原

河合さんにとって、婚活中の支援は、結婚生活の準備でもあるんですね。

河合さん

そうですね。

成婚された方から、あとでお子さんの写真が届くこともあります。そういうときは、本当に嬉しいです。

結婚したら終わりではなく、その先の人生がある。私はそこまで見据えて支援したいと思っています。

理系男性の優しさが、ちゃんと届くように

笠原

理系男性の中には、「恋愛経験が少ないから自分は結婚できないのではないか」と不安に思っている方もいると思います。そういう方に、河合さんはどんなことを伝えたいですか。

河合さん

結婚したいと思っているなら、できると思います。

恋愛経験が少ないこと自体が、結婚できない理由ではありません。女性の気持ちをすべて完璧に理解しなければいけないわけでもありません。

大切なのは、目の前の一人を理解しようとすることです。

笠原

女性全般を理解する必要はない。

河合さん

そうです。

女性全員の気持ちを分かろうとしなくていいんです。結婚するのは一人ですから。その人が何を大切にしているのか、何を喜ぶのか、何に不安を感じるのか。それを知っていけばいい。

理系男性は、一つのことを深く考える力があると思います。その力を、目の前の相手に向ければいいんです。

笠原

自分を別人に変えるのではなく、自分の良さが伝わる形を知っていく。

河合さん

そうですね。

不器用でもいいんです。ただ、その不器用さが相手を不安にさせているなら、少し伝え方を変えてみる。自分の優しさが届いていないなら、届く形にしてみる。

それだけで、関係が変わることがあります。

婚活は、相手を探す場所であると同時に、自分を見つめる場所です。自分がどんな人間で、どんな人と生きていきたいのかを知る場所でもある。

私は、その道のりを一緒に整理する人でありたいと思っています。

“わからない”の先にある、目の前の一人を理解する婚活

理系男性の婚活における“わからない”を、河合さんは責めません。

なぜ伝わらなかったのか。
相手は何を感じていたのか。
自分の言葉は、どう受け取られたのか。

その一つひとつを一緒に見つめ、相手に届く形へ変えていく。

河合さんにとって結婚相談所は、ただ相手を探す場所ではありません。出会いを通して自分を見つめ、違う価値観を知り、結婚生活に必要なすり合わせを学んでいく場所です。

恋愛経験が少ないから、結婚に向いていないわけではない。
女性の気持ちを完璧に理解できないから、誰かと生きていけないわけでもない。

大切なのは、目の前の一人を理解しようとすること。
そして、自分の魅力が相手に届く形を知っていくこと。

理系男性の優しさや誠実さが、ちゃんと相手に届くように。

河合さんは今日も、その間にある“わからない”を、丁寧に言葉へ変えている。

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