結婚相談所というより“人生相談所”。M&Fパートナー 宮内市子さんが、婚活に苦戦する人ほど支える理由

自分で出会い、関係を築くことが難しい人ほど支えたい。M&Fパートナー代表・宮内市子さんは、服装や人との接し方といった婚活以前の部分から、成婚後の夫婦生活まで一人ひとりに長く寄り添っています。自身を「人生相談所」と表現する宮内さんに、婚活に苦戦する人を簡単には見放さない理由を伺いました。

〈聞き手=笠原 佳介〉

今回話を聞いた人

宮内市子
宮内 市子

M&Fパートナー / 代表

埼玉県入間市の結婚相談所「M&Fパートナー」代表。2015年に相談所を設立し、夫とともに夫婦で婚活支援を行う。自身の結婚生活や仕事、子育て、親との同居などの人生経験を生かし、婚活だけでなく結婚後の生活まで見据えた「人生相談所」のような支援を大切にしている。

結婚相談所には、さまざまな人が訪れる。

異性との交際経験がほとんどない人。自分から積極的に動くことが苦手な人。相手に求める条件をなかなか変えられない人。身だしなみや人との接し方など、婚活以前のところからサポートを必要とする人もいる。

M&Fパートナー代表の宮内市子さんは、そうした婚活に苦戦する人を簡単には見放さない。

「自分で出会い、関係を築ける人は、マッチングアプリでも進めるかもしれない。けれど、それが難しい人たちを何とかしてあげるのが、仲人の仕事なんじゃないか。」

取材の中で、宮内さんはそんな言葉を口にした。

実際、その支援は相手を紹介するだけにとどまらない。服を一緒に整え、靴の揃え方や人との接し方まで伝える。婚活中の悩みだけでなく、仕事や家族、結婚後の生活について相談を受けることもある。成婚退会したあとも、何年にもわたって連絡を取り合う元会員もいるという。

自身の結婚生活や仕事、家族の介護など、さまざまな人生経験を重ねてきた宮内さん。その経験は、婚活者を「結婚させる」ためだけでなく、その人がこれからの人生を生きていくための支援にもつながっている。

宮内さんは、なぜそこまで一人ひとりの人生に関わるのか。

その原点と、婚活に苦戦する人への思いを聞いた。

おせっかいから始まった、「人と人をつなぐ」仕事

笠原

宮内さんは50歳頃から結婚相談所のお仕事を始められたとのことですが、もともと人を紹介したり、縁をつないだりすることがお好きだったのでしょうか。

宮内さん

そうですね。もともとおせっかいなんだと思います(笑)。

私は奄美大島で高校まで育ったんですけど、周りがみんな助け合うような環境だったんですよ。

同級生も男女関係なく仲が良くて、親も兄弟も知っている。もう家族みたいな感じでした。

そういう環境で育ったからなのか、人を紹介するのが昔から好きだったんです。

「あの子とあの人、合いそうだな」と思ったら会わせたりしていました。

笠原

結婚相談所を始める前から、実際に結婚につながった方もいたんですか。

宮内さん

いましたよ。

東京の友達と奄美の知り合いをつないだり、友達の友達を集めて合コンをしたり。

合コンをするときも、私は少し離れた席から見守ってるんです(笑)。

それで遠距離恋愛になって、結婚した二人もいました。

何組か結婚しましたけど、全部ボランティアです。

自分でお金を払って飲みに行って、結婚したら結婚式でご祝儀を出して、子どもが生まれたらお祝いを渡して。

「私、何やってるんだろう」って(笑)。

笠原

完全に趣味で仲人をされていたような状態ですね(笑)。

宮内さん

そうなんですよ。でも、自分が楽しくてやっていたんです。

ただ、だんだん紹介できる独身の人が周りにいなくなってきて。

そのときに結婚相談所という仕事を知って、「今までボランティアでやっていたことが仕事になるんだ」って。

それで説明会に行ったのが始まりです。

笠原

かなり後になってから始められたんですね。

宮内さん

もっと早くやったらよかったなと思います。

そうしたら、もっとたくさんの人をお世話できたのになって。

M&Fパートナー代表・宮内市子さん
M&Fパートナー代表・宮内市子さん

資格より、人生経験。「結婚した後」のことまで話せるのが強み

笠原

長く仲人を続ける中で、宮内さんが支援に活きていると感じるものは何ですか。

宮内さん

私は、資格より経験だと思っているんですよ。

もちろん資格が悪いということではないです。

でも、たとえば税理士さんでも、資格を持っているだけの人と、実際にいろいろな会社を見てきた人では違うじゃないですか。

仲人も同じだと思うんです。

笠原

宮内さんの場合、どんな人生経験が会員さんへの支援につながっていますか。

宮内さん

もう、いろいろですよ。

ずっと会社員もやってきたし、結婚生活も長いし、夫の転勤もあったし、義母の介護もありました。

仕事を続けながら相談所を始めて、介護もしながら少しずつ会社を辞めていって。

結婚すると、夫婦だけのことじゃなくなるじゃないですか。

仕事もあるし、親もいるし、子どもができれば子どものこともある。

若い頃に思い描いていた「結婚」と、実際の結婚生活って全然違うことが起きますよ。

笠原

未婚の若者は特に、実際の結婚生活に対する解像度がどうしても低くなりますよね。

宮内さん

そうなんです。

恋愛のテクニックだけなら、若いカウンセラーさんの方が分かることもいっぱいあると思います。

でも、結婚はその先がある。

結婚して、仕事をどうするのか。夫婦で喧嘩したらどうするのか。親の介護が始まったらどうするのか。子どもの教育方針でぶつかったらどうするのか。

そういうことは、ある程度経験しているからこそ話せることもあるんですよね。

何が起きるかを全部予測できるわけじゃないですけど、「こういうことも起こり得るよ」という引き出しはたくさん持っていると思います。

「こういう人を何とかしてあげるのが、結婚相談所なんじゃないか」

笠原

これまで多くの会員さんを見てきた中で、「この人は特に支えてあげたい」と感じた方はいらっしゃいますか。

宮内さん

います。

今でもすごく覚えている男性がいるんです。

最初の問い合わせメールが、本当に短かったんですよ。「入会したい。どうすればいいか」みたいな感じで。

こちらから日程をいくつか送ったら、「何月何日何時」だけ返ってきて。

ちょっと心配になって、最初に会うときは主人にも一緒に来てもらったくらいでした。

笠原

実際にお会いして、どんな印象だったんですか。

宮内さん

当時35、36歳くらいだったかな。

毛玉のついた服を着ていて、ほとんど目も合わせられないような子だったんです。

年収も300万円に届かないくらいでした。

プロフィールを作るために話を聞いていったら、お母さんは病気で亡くなっていて、お父さんと二人で暮らしていたんですね。

お父さんと同じ職場で働いて、二人で住宅ローンも返していた。

その話を聞いた日の夜、私、お風呂で泣いちゃったんですよ。

笠原

どうしてそこまで心を動かされたのでしょうか。

宮内さん

お父さんも本当に一生懸命、子どもたちを育ててきたんだなと思って。

息子を大学まで行かせて、一緒に働いて、家も買って。

「この子も何とか結婚させてあげたいな」って思ったんです。

条件だけ見たら、入会を断る相談所もあるかもしれません。

でも私は、そのときに思ったんですよ。

こういう子を何とかしてあげるのが、結婚相談所なんじゃないかって。

マッチングアプリで自分で出会えて、自分で関係を築ける人は、それで結婚できるじゃないですか。

でも、それが難しい人がいる。

私は、そういう人たちを何とかしてあげるのが仲人の仕事だと思っています。

笠原

その男性は、その後どうなったのでしょうか。

宮内さん

2年くらいかかったかな。ちゃんと成婚しましたよ。

最初の頃を知っているから、本当に嬉しかったです。

靴の揃え方からでもいい。婚活を通じて、人として少しずつ変わっていく

笠原

先ほどの男性には、具体的にどのようなサポートをされたのでしょうか。

宮内さん

本当に一からですよ。

まず洋服を一緒に揃えました。

別に高い服じゃなくていいんです。ユニクロでも何でも、その人に合うものをちゃんと着ればいい。

それから座って話をするときも、手をどうしたらいいか分からなくて、ずっと落ち着かない感じだったから、「手は膝に置こうね」って。

家に来たら靴もそのままだったので、「玄関では靴を揃えるんだよ」とか。

そこからです。

笠原

婚活の会話術以前のところから教えることもあるんですね。

宮内さん

ありますよ。

でも、知らないんだからしょうがないじゃないですか。

知らないだけなんですよ。

誰かが教えてくれていたらできたかもしれない。でも、今まで教わる機会がなかった。

だったら、今教えればいい。

婚活をする中で、人との接し方とか、常識とか、作法とか、そういうことも一緒に身につけてくれたらいいと思っています。

笠原

その男性にも、婚活以外の変化が見えてきましたか。

宮内さん

変わりましたね。

最初は本当に短いメールしか送れなかった子が、最後には「宮内さんのおかげで結婚できました。ありがとうございました」みたいなメールを送れるようになったんですよ。

「こんな文章を打てるようになったんだ」って。

結婚したこともうれしいけど、人としてできることが増えていったこともうれしかったです。

私は結婚させたいのはもちろんですけど、婚活を通じて少しでも人として力をつけて、人生を楽しく生きていけるようになってほしいんですよね。

「入っただけじゃ合格しない」。支えるけれど、代わりに婚活はできない

笠原

宮内さんはかなり手厚く支援されていますが、一方で、本人にも求めることはありますか。

宮内さん

もちろんあります。

結婚相談所って、私は塾と一緒だと思っているんです。

「名門大学に入りたい」と思って塾に入ったとしても、塾に入っただけでは合格しないじゃないですか。

先生は勉強の仕方やノウハウは教えられるけど、代わりに試験を受けることはできない。

婚活も一緒です。

相談所に入っただけでは結婚できない。最後は本人が動かなきゃいけないんですよ。

笠原

なかなか本人が動けない場合は、どうするのでしょうか。

宮内さん

もう、何回でも言いますよ(笑)。

主人とも毎日のように会員さんの話をしています。

「なんでまた同じことしてるんだろうね」とか、「また高望みしてるよ」とか。

もう子どもの話をしてるみたいな感じです。

腹が立つこともありますよ。本当に何回言っても同じことをする子もいますから(笑)。

でも、結局かわいいんですよね。

笠原

同じことを繰り返しても、見放すわけではないんですね。

宮内さん

見放さないですね。

ただ、その人に合うやり方には変えます。

たとえば、条件だけ見てどんどん若くてきれいな女性に申し込んでしまう男性がいたんです。

何度「そこばかり申し込んでも難しいよ」と言っても、システムを開くとまた同じような人に申し込む。

プロフィールがカタログみたいに見えちゃうんでしょうね。

だから、その人は申し込みできる件数自体を減らしました。

たくさん申し込めるから、深く考えずに押してしまう。

だったら仕組みを変えようって。

笠原

単に「ちゃんとやりなさい」と言うだけではないんですね。

宮内さん

そうですね。

同じやり方で全員がうまくいくわけじゃないですから。

どうしたらこの人が動けるかな、どうしたら気づけるかなって、その人に合わせて考えます。

親のように思う。でも、親とは違う。「何でも話せる第三者」でいたい

笠原

宮内さんのお話を聞いていると、会員さんとの距離がかなり近いように感じます。どんな感覚で接しているのでしょうか。

宮内さん

気持ちは親に近いですね。

若い会員さんだったら、自分の子どもと変わらない年齢ですから。

「この子が自分の子だったらどうするかな」と考えることもあります。

でも、本当のお母さんになっちゃいけないとも思っています。

笠原

それは、どういう意味でしょうか。

宮内さん

お母さんって、やっぱり絶対的に我が子の味方じゃないですか。

だから会員さんには、「交際相手のことを何でもお母さんに相談しない方がいいよ。私に相談しなさい」って言うこともあります。

親に相談すると、子どもが傷ついていたら「そんな人やめなさい」ってなりやすい。

でも私は、会員さんの味方ではあるけど、お相手の言い分も考えなきゃいけない。

自分の会員さんがかわいいからって、全部こちらが正しいということではないですから。

笠原

親のように気にかけながらも、第三者としての立場は残しているんですね。

宮内さん

そうですね。

特に男性って、本音で相談できる人があまりいないんじゃないかなと思うんです。

婚活していて、私の前で泣く男性もいましたよ。

でも、私は別に動揺しないんです。「そうだよね」って。

泣けるということは、それだけ心を開いてくれたということじゃないですか。

血のつながっていない第三者だからこそ言えることってあると思うんですよ。

一年、二年、長い人だと三年くらいずっと話していると、こちらがどういう人間かも分かってくる。

そうすると、もう包み隠さず相談してくれるようになります。

笠原

成婚したあともその関係は続くのでしょうか。

宮内さん

続きますね。

私は、血のつながっていない家族みたいなものだと思っています。

ベタベタする家族ではないですよ。

でも、何か困ったことがあったときに、「ちょっと宮内さんに聞いてみよう」と思い出してもらえる。

そういう存在でいたいんです。

成婚は卒業ではない。夫婦“120年分”の経験を、その後の人生にも

笠原

実際に、成婚退会した方から後になって相談が来ることもありますか。

宮内さん

あります、あります。

何年も前の会員さんから、急にLINEが来ることもありますよ。

「お久しぶりです」って。

辞めたあとも、結婚生活のことだったり、家族のことだったり、いろいろ相談されます。

必要なら弁護士を紹介したこともありますし。

だから私、「人生相談所なの、うち」って思ってます(笑)。

笠原

まさに婚活だけではないんですね。

宮内さん

だって、結婚してからの方が人生長いじゃないですか。

結婚したらそれで全部問題がなくなるわけじゃない。

夫婦喧嘩もするし、仕事の悩みもあるし、子どものことや親のことも出てくる。

私たちはそれなりにいろいろ経験してきているので、何かあったら聞いてくれればいいと思っています。

主人も私も60年くらい生きているから、夫婦で120年分の経験値が詰まってるって会員さんには言ってます(笑)。

笠原

120年分(笑)。

宮内さん

お得でしょ(笑)。

相談所にいた期間が1年だったとしても、そのあと20年相談できるかもしれない。

成婚料を払って、「これで終わりです」じゃないんですよ。

私たちが生きている限り、困ったときは相談してくれればいい。

誕生日にLINEをくれる元会員さんもいるし、子どもが生まれたって連絡してくれる人もいる。

そうやってつながっていられるのが嬉しいんです。

笠原

改めて、宮内さんにとって仲人とはどんな仕事なのでしょうか。

宮内さん

結婚させるのはもちろんです。

でも、その人の人生は結婚して終わりじゃないですからね。

婚活をして、いろいろなことを覚えて、人として成長して、結婚して、そのあとも人生が続いていく。

だから、結婚だけじゃなくて、その人が人生を楽しく生きていける方向に少しでも持っていけたらいいなと思っています。

宮内さんご夫婦
宮内さんご夫婦

結婚を支えることは、その人の人生を支えること

宮内さんの支援は、効率とは少し遠いところにある。

婚活が得意で、少し背中を押せばすぐに成婚できる人だけを支援するのであれば、靴の揃え方から教える必要はない。何度伝えても同じ相手に申し込む会員と、繰り返し向き合う必要もない。成婚した何年後かに届く相談に応える義務もない。

それでも宮内さんは、そこまで関わる。

背景にあるのは、「一人でできる人だけを結婚させるのが仲人ではない」という考えだ。

人との接し方を知らなければ、教えればいい。自分に合う相手が分からなければ、一緒に考えればいい。すぐに行動できなければ、その人が動ける方法を探せばいい。

そして、その過程で身につけたものは、婚活だけに役立つわけではない。

人と向き合うこと。自分の課題を知ること。誰かの意見を受け止めること。相手の立場を想像すること。そうした力は、結婚したあとも、その人の人生を支えていく。

宮内さんが自らの相談所を「人生相談所」と表現するのは、単に相談できる範囲が広いからではないのだろう。

目の前にいるのは「会員」という一時的な顧客ではなく、これから何十年と人生を歩いていく一人の人間である。

だからこそ、婚活に苦戦する人ほど放っておけない。

宮内さんのおせっかいは、人と人を結びつけるところから始まり、いつしかその人の人生そのものに寄り添う仕事へとつながっているのである。

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