結婚・離婚を経験する中で、「条件がそろうこと」と「幸せに暮らせること」は同じではないと実感したRio Marriage代表・渋谷エリナさん。自分を休ませ、大切にできるようになったことで、人との付き合い方や選ぶ相手も変わっていったといいます。自身の経験を正解として押しつけず、一人ひとりが自分の価値観を知り、納得して相手を選ぶための“ありのままの婚活”について伺いました。
〈聞き手=笠原 佳介〉
今回話を聞いた人
Rio Marriage / 代表カウンセラー
神戸市東灘区を拠点とする結婚相談所「Rio Marriage」代表カウンセラー。大学で心理学を学び、人材紹介会社ではキャリアカウンセラーとして勤務。自身の結婚・出産・離婚などの経験も生かしながら、「自分らしく幸せになれる相手」と出会うための婚活を支援している。
婚活では、年収や職業、年齢、容姿など、相手に求める条件を考える場面が多い。
もちろん、結婚は生活であり、経済面を含めて現実的に考えることも必要だが、条件がそろっていることと、その人と幸せに暮らせることは同じではない。
神戸を拠点に結婚相談所「Rio Marriage」を運営する渋谷エリナさんは、自身の結婚と離婚を通して、そのことを身をもって経験した一人である。
かつては「頑張らなければならない」という思いが強く、自分の意見を抑え、相手に合わせるうちに、自分が何を好きなのか、何をしたいのかさえ分からなくなっていったという。
離婚を経て、自分を休ませ、自分自身を大切にすることを覚えた。その変化は、やがて人との付き合い方や、選ぶパートナーにもつながっていった。
現在、渋谷さんが婚活者に伝えているのは、「自分らしくいられる相手を選んでほしい」ということ。ただし、自身の経験を正解として押しつけることはしない。
その人が何を幸せと感じるのかを一緒に探し、最後は本人自身が納得して選べるように支える。
結婚・離婚を経験した渋谷さんが考える、自分を大切にしながら進める婚活について伺った。
条件がそろっていても、「話し合えない結婚」は苦しい
渋谷さんは、結婚・子育てを経験する中で、「自分らしくいられること」が何より大切だと感じられたそうですね。
はい。
以前の私は、今振り返ると「頑張らなければいけない」という気持ちがすごく強かったんです。
自分を甘やかすことを許せなくて、楽をすることもよくないと思っていました。「こうしなければならない」という考えが強くて、自分自身にかなり厳しかったと思います。
結婚生活の中でも、自分の意見を言わなければ揉めないし、責められることもないと思うようになって、だんだん意見を言わなくなっていきました。
そうすると、今度は自分が何を好きなのか、何がしたいのかまで分からなくなっていくんですよね。
自分で意思決定することがどんどん難しくなって、「私は何もできない人なんだ」と感じるようになっていました。
当時は、「自分らしくいられていない」という自覚はありましたか。
なかったですね。渦中にいると、本当に分からないんです。
後から振り返って、ようやく「あのときは自分らしくなかったんだな」と思える感じです。
私自身、経済面も含めて条件を考えて結婚しましたし、条件が大切だと思う気持ちは今でもすごく分かります。
家庭は生活なので、お金ももちろん必要です。子どもが生まれれば、なおさら現実的に考えなければならない部分もあります。
だから、会員さんが「年収は大事です」と言ったときに、私は「そんなものは気にしなくていい」とは言いません。
ただ、自分の経験から、条件がどれだけよくても、話し合えなかったり、自分らしくいられなかったりする関係は苦しくなる可能性があるということは伝えています。
条件を否定するのではなく、「条件以外にも見ておいた方がいいものがある」と伝えるイメージでしょうか。
そうですね。
まず、「分かるよ」って共感します。私も条件に魅力を感じた経験があるので、その気持ちは本当に分かるんです。
そのうえで、「私はこういう経験をしたよ」「こういう部分に目をつぶると、こういうことが起きる可能性もあるよ」と、一つの判断材料としてお話しします。
それを聞いて、「それでも私はこの条件を大切にしたい」と思うなら、それもその方の選択だと思うんです。
私の経験が全員にとっての正解ではないので。
「甘やかす」ことは、自分を大切にすることだった
離婚をきっかけに、ご自身との向き合い方も変わっていったのでしょうか。
変わりました。
離婚って、手続きだけではなくて、精神的にも体力的にも本当に大変なんですよね。
私の場合は子どもを育てながらだったので、普段の生活を続けながら、引っ越しやさまざまな手続きも一人で進めなければいけなかった。
全部終わったときに初めて、「私、人生で一番頑張ったな」と思えたんです。
それまでは、何かをしていないと落ち着かなかったんですけど、そのときは「もう十分頑張ったから、何もしないでみよう」と思いました。
「何もしない」ということを、自分に許した。
そうなんです。
子どものことなど、やらないといけないことはもちろんやります。でも、それ以外は疲れていたら寝る。しんどかったら横になる。
それまでの私なら、「そんなことをしていたら駄目」と思っていたことを、何カ月か自分に許してみたんです。
そうすると、初めて「私は今まで、自分を労わってこなかったんだ」と気づきました。
私の中では当時「自分を甘やかす」という感覚だったんですけど、今考えると、たぶん自分を大切にするということだったんですよね。
自分を大切にすると、選ぶ相手も変わっていく
それによって、人との付き合い方にも変化がありましたか。
ありました。
自分にすごく厳しいと、他人から厳しく扱われても、あまり違和感を持てないんです。
でも、自分を大切にするようになると、自分を大切にしてくれない人に対して、「あれ?」と思えるようになったんですよ。
自分に対して攻撃的だったり、必要以上に厳しかったりする人に、センサーが働くようになったというか。
これが、私の中ではすごく大きな変化でした。
それが、現在のパートナー選びにもつながっていった。
そうですね。
以前の私は、相手が「右」と言えば右、「左」と言えば左というような感じで、自分の意見を言えませんでした。
今は、自分本位に見えるような意見でも言えますし、多少わがままなことを言っても受け止めてもらえる。
たぶんそれは、「自分の意見を言ってもいい」「わがままを言ってもいい」と、自分自身に許せるようになったからなんですよね。
自分が自分をどう扱うかによって、周りにいる人も変わるんだなと実感しました。
自分が変わったことで、選ぶ相手も変わった。
これは、今の婚活支援にもすごくつながっています。
「私の経験が正解」ではない。大切なのは、その人自身の価値観
一方で、渋谷さんが「自分らしくいられる相手」を大切にしているからといって、会員さんにも同じ価値観を求めるわけではないんですよね。
そこはすごく気をつけています。
私は、自分の意見を言えなかったことで自己肯定感が下がっていきました。
でも、別の人にとっては、相手に決めてもらうことが全然苦ではないかもしれないじゃないですか。
「私は相手についていきたい」「いろいろ決めてもらった方が幸せ」という人もいると思います。
それなら、それでいいと思うんです。
「自分らしくいること」の形自体が、人によって違う。
そうです。
たとえば私の経験を話したときに、「でも私は、それくらいなら全然気になりません。むしろ別の条件の方が大切です」と言われたら、その反応を見るんです。
「あ、この方にとって大切なのはここなんだ」と。
そうしたら、そこを軸にしてお相手を探していけばいい。
私の実体験は、あくまで価値観を考えてもらうための材料なんです。
ご自身の経験から「こうした方が幸せ」と答えを出すのではなく、経験を投げかけて、会員さん自身がどう感じるのかを見る。
そうですね。
基本的に私は否定から入らないです。
会員さんが「年収の高い人がいい」と言ったら、「分かります」と言いますし、「条件を気にするなんて駄目」とは思いません。
ただ、「本当にそれが一番大切なのかな?」というところは、時間をかけて一緒に見ていきます。
条件って、プロフィールを見れば分かりますよね。
でも、「一緒にいて居心地がいい」とか、「自分の感情を拾ってくれる」とか、そういうことは実際に会ってみないと分からない。
だから最初から条件だけで可能性を閉じるのではなく、まず人と会ってみることも大事だと伝えています。
二択を重ねて、「本当に大切なもの」を見つけていく
会員さん自身も、「自分が本当に大切にしたいもの」を最初から分かっているとは限らないですよね。
そうなんですよね。
だから、一対一でたくさん話します。
「この条件は本当に必要なのか」「こっちとこっちだったら、どちらを大切にしたいのか」と話しながら、どこにその方の価値観があるのかを探っていきます。
最初は「これが絶対条件です」と言っていたものが、話していくうちに「実はそこまで大事じゃなかった」と分かることもあります。
逆に、自分でもそんなに意識していなかったことが、実はすごく大切だったと分かることもあります。
答えを渡すというより、本人の中にある答えを一緒に見つけていくんですね。
そうですね。
結婚した後って、絶対に何かしら「思っていたのと違う」ということが出てくると思うんです。
完璧な人はいないので。
そのときに、「なんでこの人を選んだんだろう」と全部相手のせいにするのではなくて、「でも、私は婚活中にここまで考えて、この部分も分かったうえで、この人を選んだよね」と振り返れることは大事だと思っています。
たとえば、結婚後に相手の優柔不断さにイライラすることがあったとしても、婚活中に「優柔不断なところがあっても、それ以上にこの部分を大切にしたい」と自分で選んでいたなら、「あのとき私はそれでいいと思ったよね」と振り返れる。
「自分で納得して選んだ」と思えることが、その後の結婚生活でも大切になると思うんです。
だからこそ、成婚させることだけではなく、そこに至るまで本人が納得して選べているかを大切にしているんですね。
そうですね。
私は、最後はご本人に「選んだのは自分」と思えるところまで考えてほしいんです。
そのために、一緒に整理することはたくさんできます。
でも、最後に選ぶのはご本人です。
仲人自身が、「自分らしくいられる相手」でありたい
そのためには、会員さんが渋谷さんに本音を言える関係も重要になりそうですね。
すごく重要だと思います。
私は心理学も学んできましたが、その中でも、人との信頼関係を作ることはすごく大切にしています。
婚活って、人生のかなり大きな意思決定をする活動じゃないですか。
その中で、仲人に本音を言えなかったら、本当に考えていることを一緒に整理することもできません。
だから、会員さんが私に対しても素直な意見を言える状態がいいと思っています。
「自分らしくいられる相手を探す」以前に、仲人との間でも自分らしくいられることが大切だと。
そうですね。
私が相手でも、自分らしくいられる状態がいい。
「渋谷さん、それは違うと思います」と言ってもらってもいいですし、「私はそう思わないです」と言ってもらってもいい。
そこで私が否定してしまったら、会員さんも本当のことを言えなくなってしまいます。
私自身、以前は自分の意見を言えないことが苦しかったからこそ、そこはすごく大切にしたいです。
「ありのまま」は、努力しなくていいという意味ではない
渋谷さんは「ありのままで婚活してほしい」ともお話しされていますよね。一方で、「ありのままなら何もしなくてもいい」という意味ではない。
もちろん、そういう意味ではないです。
女性なら「じゃあ化粧をしないですっぴんで行けばいいのか」とか、男性なら「清潔感がなくてもいいのか」という話ではないんですよね。
身だしなみを整えたり、出会うために行動したりすることは必要です。
ただ、自分の感情やしんどさまで否定して、無理に別の自分を演じ続けなくていいと思っています。
自分を大切にしながら婚活をしてほしい、という意味での「ありのまま」ですね。
婚活は「優劣」ではなく、ぴったり合う相手を探すパズル
最後に、婚活がなかなかうまくいかず、自信をなくしている方に伝えたいことはありますか。
婚活って、私は優劣ではないと思っているんです。
断られたり、うまくいかなかったりすると、「自分の方が劣っているんだ」と思ってしまう方もいると思います。
でも、そうじゃない。
私は相手選びって、パズルみたいなものだと思っています。
すごく素敵な人とうまくいかなかったからといって、自分が素敵じゃないわけではない。
ただ、その人とは合わなかっただけなんですよね。
自分とカチッと合う人に出会うまで、探していくものだと思っています。
必要以上に自分を否定しなくていいんですね。
そうです。
自分を大切にしてくれる人はいると思うので。
ただ、一番大事なのは、やっぱり行動することなんですよね。
家にずっといたら、出会える人にも出会えません。
もちろん、しんどいときは自分の心と相談していいし、休んでもいい。期間がかかってもいいと思います。
でも、結婚したいという気持ちが自分の中にあるのであれば、諦めずに少しずつでも動いてほしいです。
「頑張り続けてください」というより、自分を大切にしながら、それでも歩みを止めない。
そうですね。
私は、あまり「もっと頑張らないと」と自分を追い込んでほしくないです。
でも、自分が望んでいるものに向かって行動することは必要だと思っています。
活動している中では、絶対にしんどいこともあります。
それでも最後に、「あのとき動いてよかった」「この人に出会えてよかった」と思えたら、それまでの行動も正解に変わると思うんです。
だから、自分の行動を一緒に正解にしていきましょうという気持ちでいます。
その途中でしんどくなったときに、一人で抱えずに頼ってほしい。
そこを一緒に支えるのが、仲人の仕事だと思っています。
自分を大切にしながら、自分で選べる婚活を
渋谷さんが伝える「自分らしくいられる婚活」は、何も努力しなくていいという意味ではない。
条件や結婚後の生活も考え、出会うために行動する。そのうえで、無理に別の自分を演じ続けなくていいというのが、渋谷さんの言う「ありのまま」である。
自身も、自分を大切にできるようになったことで、自分を大切にしてくれない人への違和感に気づき、選ぶ相手が変わった。
ただし、その経験を他人の正解にはしない。自分の経験を一つの材料として差し出しながら、「あなたはどう思いますか」と問いかけ、本人が納得できる選択を支えている。
婚活は、人としての優劣を決める競争ではなく、自分とカチッと合う相手を探していくパズルのようなもの。
誰かに選ばれるために自分をすり減らすのではなく、自分を大切にしながら、自分自身の意思で相手を選んでいく。
Rio Marriageには、そんな“ありのままの婚活”への思いが込められている。



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